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トピックス 在宅での看取り8年間で1000件超える

2017年7月14日(金) 配信
やまおか在宅クリニック( 大分市)
「家に帰りたい」を支援 「よい人生だった」目標に

大分で在宅医療に取り組む山岡憲夫医師は、家に帰りたいという患者の希望を叶えるために、8年前「やまおか在宅クリニック」を開いた。県立病院で胸部外科部長の時、多数の末期患者を診た経験から、死が避けられない末期の患者に病院でできることは限られており、在宅でもできることだと思った。在宅医としての看取りは取材の前週999人になった。5月25日、JR大分駅に近い住宅地にある医院を訪問した。

できることは病院も在宅も変わらない
大分市内には、約400の病院・診療所がある。「最近の5年間で、在宅医療に取り組む開業医が増え、火曜や木曜の午後を在宅診療に充てる医師が多い。特に、大分市内には130の老人ホームがあり、ドクターを必要としています」と、山岡さんは、医療や介護を取り巻く環境が大きく変わってきたと話した。開院から昨年までに講演335回など、在宅医療や在宅死について理解を広める活動が実ってきた。

2009年7月に開業した時は、在宅医療が成り立つかどうかさえ不明のゼロスタートだったが、県立病院の胸部外科部長の実績や、ホスピス院長などの経歴を聞きつけて、周囲の病医院から在宅医療を希望するたくさんの患者が紹介されてきた。在宅医療を希望しても、その希望を叶える地域の受け皿が十分になかったのが、末期医療の専門医だった山岡医師の開業でニーズが一気に顕在化した。

「在宅での検査や薬は、病院と同じ。ポータブルエコー機もあり、腹水や胸水のチェックもできます」。痛みなどの苦痛の緩和から、点滴、在宅酸素や人工呼吸器、中心静脈栄養、胃瘻や経鼻栄養カテーテル、気管切開、人工肛門、輸血、褥瘡措置まで、末期入院患者に施す処置は在宅でもできる、と山岡さん。

現在、同院は医師2人、看護師8人、事務5人、運転手2人の17人体制になった。医院から車で30分圏内が訪問エリアだが、朝に病院を退院した患者さん宅に、午後には在宅に向かう。こうした機動性は、地域の訪問看護ステーションやケアマネジャー、訪問介護事業所、薬局などとの連携で実現している。訪問入浴で入浴もある。

必要な多職種の連携
最初から最期までみるケアマネジャー

連携する訪問看護STは25事業所。関わる看護師数ではおよそ200人。市内には「機能強化型訪問看護ステーション」の大分豊寿苑のように30人の看護師を擁するところもあるが、8割は看護師5人以下の体制。「在宅医療に訪問看護は必要。3人いれば、訪問看護STは開ける。公的な起業補助があってよいのでは」と山岡さんは要請する。「ケアマネジャーの調整や、ホームヘルパーなどの介護がないと在宅介護はやっていけません。医療介護の連携がものをいう」と話す。

「ケアマネジャーは、最初から最期までをその人をみていく役割があります。医療をもっと知ってもらいたい」と、山岡さんは奮起を促した。

「在宅へ帰りたいという希望があれば、私たちは一切拒みません。初めから在宅で最期までと決める必要もない。本人が『家に帰りたい』のは、家で生活をしたいのであって、家で死にたいとまで思っているわけではないのです。在宅で何かあれば、いつでも当院に電話をください、と言っています。本人が入院をしたいと言うのであれば、連携の病院に入院してもらうので安心です」。

在宅医療を始めて、病院に入院するのは25 %で、75%の人は最期まで在宅で送る。

末期患者の緩和ケアは、平均40日と言う。最期には、意識が混濁する傾眠が1週間程度続く。「よい人生だった、と思える最期を迎えてもらうのが私たちの目標」と話す。

3年前に医師2人体制となり、「土日は交代で休めるようになった」。

16年4月、主治医・副主治医の複数の医師体制で臨む機能強化型在宅療養支援診療所となった。ただタッグを組む医師に看取り実績が年間2人以上求められ、利用者負担は40 0円上がる。大分県初の「在宅緩和ケア充実診療所」の指定も受けた。

在宅医療を担う地域の医療機関を支える「いわば在宅医療での2次救急のような役割を果たしたい」と山岡さんは希望する。

一昨年から大分県では、市町村や専門職団体の連携を強めて、在宅医療の推進を図ろうと、「大分県在宅医療推進フォーラム」が開催。同クリニックが実行委員会事務局を務めている。

避けがたい在宅看取りの家族負担
2012年に同クリニックは、09年7月の開院当初からそれまでの間に当院で看取った患者の遺族236人(回答131 人)にアンケートを実施した。回答者の9割は配偶者、子どもで、患者年齢は50 〜 60 代20%、70 〜 80代63%、90代以上17%。在宅医療についての総合的な満足度は、「非常に満足」89%、「少し満足」9%、「どちらとも言えない」と「少し不満足」は足して2%に過ぎなかった。「患者の最期が穏やかであった」との回答が合わせて96%だったことが、「満足」に反映しているようだった。

しかし、アンケート記載者自身に「最期を迎えたい希望場所」を尋ねたところでは、「最期まで自宅」という回答は、選択肢の中で最も多かったとはいえ、40%に止まった。在宅看取りをやり遂げたという満足感はあっても、実際には様々な負担があり、自分の時は家族に負担を掛けたくないという気持ちが表れた。回答は続いて「家族に任せる」27%、「分 からない」17%、「ホスピス病院」13%、「介護施設」5%、「病院」4%だった。

このアンケート結果について、同クリニックは「家族の介護疲れや家族自身が看取りを迎える場所について揺れ動く気持ちをうかがわせる」として、「家族ケアを含めた在宅医療の質の向上を図る」必要があると総括している。
(出典:シルバー産業新聞)

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