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介護保険と在宅介護のゆくえ60 3割負担・総報酬割導入だけではない、介護保険法改正

2017年4月17日(月) 配信
2月7日に介護保険法など9本の改正案が国会に出された。2018年8月から居宅利用者のうち約13万人、特養ホーム利用者のうち約1万人が3割負担になることや、第2号被保険者の保険料が所得比例によりアップすることなど、負担増が大きな争点である。

しかし、来年以降にならないと「自分の負担がどう変わるか」誰もわからない。高額介護サービス費の変更も同様である。

75歳以上の医療保険料も、導入時に反対を抑えるために行われた「保険料を所得に応じて減額」した特例が18年度から段階的に外される。高齢者の財布は一つであり、ジワジワとした負担増は、その分だけ介護保険や後期高齢者医療保険の給付の削減につながる。しかし、介護保険法改正では新たに2つの制度改正も行われようとしているのである。

1.市町村の介護度改善を競争させ、交付金に差をつける
今回の介護保険法改正の1つに、市町村の介護保険事業計画に「自立した日常生活の支援施策」を追加し、介護給付の額を地域別、年齢別、要介護認定及び要支援認定別に報告させ、都道府県・国からの比較データを公表し、それにより交付金の額を変更する「財政的インセンテイブ付与の規定の整備」が織り込まれた。

このことは、ここ数年和光市モデルや大分モデルなど「介護保険からの卒業」「介護度の改善」により「自立支援」の名目で介護給付を削減できたことが評価されてきたが、それを市町村ごとに競争させ、交付金の額で評価する政策が織り込まれたものである。

05年の介護保険法改正で、地域包括支援センターや地域密着型サービスが誕生して以降、市町村が指定し、市町村の住民だけが利用できるサービスへの移行が進んだ。15年からは、2つの介護予防サービスが市町村事業へと変更になり、当初の介護保険法改正案では「要介護2までのサービスを市町村事業へ移行する」という方向が示された。市町村への介護保険の責任移行が進められてきたのである。今回、市町村への交付金を介護給付の削減で左右するというのは、市町村への圧力のみならず、市民への圧力でもある。

要介護状態になるのは、脳血管疾患や認知症、老衰が3 大原因で、利用者の73%が80歳以上である。この要介護状態に対して保険で介護を提供するシステムが介護保険制度である。そのために40歳から死ぬまで保険料を納めているのである。

要介護者のいる世帯は独居が最も多く、次いで高齢夫婦世帯と続く。「サービスを利用すれば負担が増える」ので、居宅要介護者の限度額に対する実際の利用額をみると、要支援は4割以下、要介護1で44・3%、要介護5でも64・6%である。

1人あたりの介護利用額は02年から15年まで毎年下がっている。国の介護保険の収支も公表されている15年の間、黒字である。それでも2年前から2割負担、来年から3割の自己負担が強いられる可能性がある。

生活援助を介護保険から外そうとしているが、介護保険では「家族が同居していれば生活援助は受けられない」のである。元気な人が買い物や掃除を依頼しているのではない。「入浴介助は受けても、風呂場の掃除は自費」なら、受けられる人は限られる。介護度が改善され、自分でできるようになることは誰もが望むことである。

「成果を出さなければ市町村への交付金が減る」のでは、市町村や住民はたまらない。要介護になること、それが改善できなければ「迷惑をかける」のなら「生きていたくない」と、要介護のサービス利用者を追い込むことになりかけない。高齢期を支援する介護保険が逆に高齢者を追い詰めることになりかねない。このような政策は誤りである。

2.「共生社会」の名のもとに障害者福祉を介護保険に統合するのか
昨年「我が事丸ごと地域共生社会」が政策化され、それが今回の介護保険法改正で「公的介護保険改革」として、高齢者や障がい者、児童の共通サービスをデイサービス、訪問介護で創設する方向である。

「年齢による区別は妥当ではない」と当事者が言うのは理解できる。しかし国が制度改革として言い始めると「障害福祉、児童福祉を介護保険制度に一本化する」方向が見えてくる。「福祉」から「保険」への切り替えであり、介護保険の年齢引き下げ(保険料徴収の拡大)であり、1〜3割負担の導入であり、市町村への責任移行である。

さらに「我が事」は「地域による住民主体の問題解決」であり、「共生」で支える美名のもとに公的サービス縮小を前提にした、市町村住民への責任転嫁である。今回の介護保険法改正は、今後の福祉の方向を左右する大きな問題を含んでいることを見過ごしてはならないと考える。

さらに、「小規模デイサービスの指定拒否権限」や「都道府県の居宅サービス指定への市町村関与の強化」など、次々と公的介護保険の市町村への移行が進むが、公的制度の縮小と、住民への負担転嫁には警鐘を鳴らさなければならない。
(出典:シルバー産業新聞)

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