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介護保険と在宅介護のゆくえ61 自立支援を強要する介護は介護保険の破綻に通じる

2017年5月17日(水) 配信
1.「自立支援」の成果による成功報酬導入は、要介護者の選別や追い詰めを加速させる
2月28日から国会で、介護保険法改正案の論議が始まった。その第一が市町村に自立支援の目標を設定し、地域別、年齢別、要介護度別の結果を公表させ、全国データと比較し、その成果により交付金を支給する保険者への締めつけ法である。

この「自立支援介護」への転換は、昨年に安倍首相がトップを務める「未来投資会議」示された。介護保険の目的を、入浴、食事、排泄等の生活の継続から「自立支援の介護保険」に変更し、介護度改善で報酬をアップし、できない事業所にはディスインセンティブ(ペナルティ)を導入するものが根拠である。

この会議では、介護度改善の事例が出されたが、その施設におけるショートステイの転倒骨折事故の数や利用者の選別に関しては触れられていない。また、全国データもなく、介護保険制度の根幹を変えるのは「財務省の抑制策」に利用されたに過ぎない。

さらに、利用者の73%が居宅で利用している介護保険の方向性をも変えるような、「自立支援介護」への転換は、被保険者のサービスの選択性や持てる力を生かした生活の継続性を奪い、追い詰める危険性を示している。無理やり自立を強いられる要介護高齢者は、「生きる力」を奪われかねないのである。

2.全国老施協も反対声明
これを受け全国老人福祉施設協議会(特養ホームの全国団体)は1月4日、「私たちは、自己実現介護(利用者一人ひとりの願う『自立』を叶える伴走型自立支援)を目指します。要介護度を自立支援における唯一の尺度とする介護報酬削減に強く反対します」という見解を出した。

3.高齢者の標準化もケアマネジメントの標準化もありえない<./b>
2月20日の閣議決定で、「ケアマネジメントの標準化」に3000万円の予算が付けられた。日本総研に委託し規範を作り2018年度にはモデル実施する方向である。

しかし、介護度を改善することがケアマネジメントの目的ではない。要介護状態になる原因は要介護1、2では認知症がトップで、次いで老衰である。全利用者では脳血管疾患による麻痺に伴う移動や排泄、摂食や言語などの障害がトップで、次いで認知症、老衰である。

その利用者の悪化リスクのアセスメントや、予防のための多職種連携は必須であり、疾病の悪化防止のための服薬や通院、感染症への緊急対応もケアマネジメントに不可欠である。しかし、その要介護者等の心身状態や疾病とあわせて、それまでの生活歴や価値観、家族との関係性や経済的状況、住環境、地域環境、近隣や友人の関係性などが、ケアマネジメントでは重要である。

全国老人保健施設協会による「機能低下及び予防の調査」(15年3月)では、「入所前の転倒、脱水、褥創、発熱、誤嚥の既往のある入所者は繰り返すリスクがあり、介入によりリスク削減効果は得られていない」と報告されている。しかしそれでも取り組み続けるのが現場である。ケアマネジメントを実践するのは要介護状態になってからの「人間らしく生きる」ためであり、「介護度の改善のため」ではない。いくつかの事例検討を通じた力の育成は必要であるが、標準化はありえない。高齢者の生き方の標準化ができないのと同様である。

4.生活援助の保険外しは在宅断念に繋がり、悪化につながる
介護保険法の規制とあわせて「生活援助を中心にサービス提供を行う場合の人員基準の見直し」が検討される。これは介護報酬を多く減額し、「無資格者」に道を開き、「誰でもできる生活援助」を具体化する方向である。また、保険給付から自費へ移行し自由価格で保険給付と併用させる「新たな混合介護」を射程に入れた改正の危険がある。介護保険の利用者は独居世帯が一番で、自宅生活の継続が自費サービス利用の可否で左右されるなら、介護保険制度の意味はない。

また、2号被保険者の保険料の総報酬割、3割負担の導入は、保険料に加えて所得格差を導入するもので、一方でサービスが減らされ、他方で負担増では、介護保険の信頼は失われてしまうだろう。
(出典:シルバー産業新聞)

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