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慢性期医療の在宅復帰支援の実践1 在宅復帰を可能にする「排尿自立」支援

2017年5月29日(月) 配信
排尿自立のためのクリティカルパス整備を
2016年度診療報酬改定で「排尿自立指導料」が認められた。尿道留置カテーテル抜去と、その後の排尿自立に向けた支援を専門職チームで実施することを評価するもの。1週間につき200点(6回まで)が算定できる。しかし一方で、医療現場ではカテーテル抜去にまだまだ消極的だ。在宅復帰を検討する段階でカテーテル利用者の受入れは、医療行為の出来ない介護事業者の障壁となっており、医介連携を進める上でも、医療機関での積極的なカテーテル抜去の取り組みが期待される。早くから「排泄自立」に取り組んできた、愛媛県慢性期医療協会会長の西尾俊治氏(南高井病院院長/愛媛県松山市)に、排尿自立の重要性と実践について聞いた。

――「排尿自立」の重要性に関心が高まってきた背景は。
世界的に見ても、日本では尿道留置カテーテルを使用する患者の割合が高すぎることがある。細菌感染などのリスク軽減や、患者本人の自立への意欲向上に向けた流れと言える。

医療の必要度が比較的低いとされる「医療区分1」の患者は、在宅復帰に向けて取り組まれることが昨今の流れだが、カテーテルがあるために在宅で介護事業者と連携が出来ないこともある。それは地域包括ケアシステムの流れにもそぐわない。

――不必要なカテーテル使用が多いということですか。
そうだ。カテーテルの必要のある人とは、排尿の自立が阻害される疾病などのある人で、具体的には「脳」「脊髄」「膀胱」のいずれか、あるいは複合で疾患などの不具合がある場合が多い。つまり、それ以外の場合はほとんどが不要と言える。

急性期から受け入れた患者は絶対安静のことが多いため、ほとんどがカテーテルのある状態で転院される。高齢者の多くも、急変時や転倒骨折などによる手術や入院を契機に、必要性があまり感じられなくても、とりあえずカテーテルをつけられている。

そうした患者に、回復期や慢性期の医療現場では、速やかに排尿の自立に向けた取り組みが求められるようになる。

――医療現場で高齢者にカテーテルが使用される背景は。
医師や看護師にとって、頻尿傾向にある高齢者にはカテーテルを使ってもらう方がいろいろと都合が良いからだ。加齢によって頻尿傾向になるため、看護師の勤務体制などからも排尿は定時で、看護師の都合に合わせて実施できる方がよい。本人の尿意などは関係ない。

一方で患者本人にとっては不快なため、自ら引き抜こうとすることも多く見られ、その防止のために身体拘束をするといった、本末転倒な結果も招いている。

理想を言えば本人に尿意を伺いながら、トイレ誘導して排尿の自立を達成できるようにすることがQOL向上の観点からも最適だ。それが難しいのであれば、紙おむつやポータブルトイレを使用することでも、排尿自立を実現できることがある。

ただし、率先してカテーテル抜去を推進する体制づくりのコストや労力、それに対する診療報酬での評価を考えれば、病院経営者に排尿自立の考えが醸成されにくい状況にあることも確かだ。

医師の養成課程においても、カテーテルを使うことは教えられても、抜去する時の判断や、その後の処置などについては特に教えられてこなかったこともある。16年診療報酬改定で「排尿自立指導料」が評価されるようになったことは、こうした考え方に変化をもたらしてくれると期待している。

――患者にどのような処置を取られるのですか。
前述のようなカテーテルの必要性が明確な患者でなければ、すぐに抜去する。それだけだ。大丈夫なのかと心配されるかもしれないが、経過を観察し、万一の場合には対応をできるようにすれば、ほとんどは自然排尿に回復していく。早い人ではその日のうちに、遅くとも1〜2週間で自然排尿に戻ってくる。

――実際に取り組まれた結果はどうですか。
南高井病院では10年ほど前から、確実に必要性が認められる人以外はカテーテル抜去に取り組んできた。その結果は、8〜9割がなくても問題なく生活できる患者であった。いかに不要なカテーテルが使用されているかがわかるだろう。

口から食べて、飲んで、排泄や排尿をすることが本人のQOLを高め、自立支援に欠かせないが、排尿がカテーテルであれば、言語聴覚士などによる摂食嚥下リハビリに取り組む気力も低下してしまう。「経口から飲食すること」と「排泄排尿すること」は、両方ともにリハビリすることが欠かせない。

――在宅復帰にはカテーテル抜去が欠かせないのですね。
介護事業者は医療行為が出来ないので、カテーテルの操作は医師や看護師か、本人または家族が行わなければならない。その意味でも、カテーテルがある状態での在宅復帰には、介護事業者の連携が難しくなることもあり、できるかぎり抜去をすることが重要になる。

抜去ができれば、おむつやポータブルトイレなどにより、介護事業者との連携の中で排泄の自立に向けたリハビリもしやすくなる。

また、ほかの選択肢として「両手が使える」「ポータブルトイレで座位がとれる」患者には、排尿時にだけ尿道に通して使用する「自己導尿カテーテル」を使って、本人や家族の助けで排尿する方法もある。この方法だと細菌感染のリスクも小さくでき、通常時はカテーテルを気にせず生活ができるので、QOL向上の観点でもメリットがある。

――介護職が排尿自立で果たす役割は。
薬によって自立排尿を達成しているなら、服薬が継続できるように声掛けをしてもらうことや、家族の理解がないと難しいこともあるので、排尿の自立がいかに重要なことなのかを家族へ丁寧に説明をしてもらうことなどがある。 カテーテルを抜去して排尿自立に移行していく中では、おむつを使用することもあるので、おむつ交換などをしてもらうことも必要。その際に、使用前と使用後の重量から尿量を記録し、推移を把握してもらいたい。異常があれば、泌尿器科の医師と連携をとってもらいたい。こうした一連の排尿自立のための役割について、多職種カンファレンスをして、自立排尿のための支援を受けられる様にすることも重要だ。

同時に、全国的な取り組みとするためには、退院支援のための排尿自立のためのクリティカルパス整備の必要も感じている。
(出典:シルバー産業新聞)

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