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ケアマネジメント快刀乱麻91 ドイツでのケアマネジメント

2016年12月16日(金) 配信
ドイツは世界で最も早い1994年に介護保険制度を始めたが、現金給付を中核にしていることもあり、ケアマネジメントが導入されていなかった。ところが、ケースマネジメントという名称で08年に立法化し、現在は具体化している。

どのようにケースマネジメントが導入され、どのように行われているかを紹介したい。確かに、日本からケアマネジメントの重要性は学んだであろうが、その時に、日本から何を真似、何を真似なかったのかを示していきたい。このことは、日本のケアマネジメントのあり方を議論する重要な素材となる。

その前に、ドイツの介護保険の概要を説明しておく。ドイツでは介護保険制度ができるまでは、介護施設や在宅の介護サービスについては公的な制度でなく、高齢者は全額自己負担で利用していた。結果的に、日本の生活保護に相当する社会扶助を受給して、介護サービスを利用する高齢者の割合が高かった。そのため、ドイツでは社会扶助受給率が高く、それを減らすことが、介護保険制度創設の大きな目的であった。その意味では、要介護高齢者の社会的入院を解消し、地域生活に移行することで、社会保障費全体の抑制を意図した日本の介護保険制度とは、創設の目的が大きく異なるといえる。

ドイツの介護保険は、乳児から高齢者までを対象に、要介護度を3段階に分けて、現金給付か現物給付を選択でき、現金と現物をミックスして受けることも可能である。在宅であろうと施設であろうと、サービスの総利用料金が給付費を超えた分は全額自己負担となる。財源は、20歳以上の人が払う保険料(労使折半)のみで、税金は投入されていないことが日本と大きく異なる。

現金給付は介護者に支払われるものであり、いずれの要介護度であっても、4週間のショートステイが別個利用できる。また、この保険で介護者向けの介護者教室が実施されていたり、家族介護に対して年金・労災については優遇措置がとられており、介護期間は年金保険の対象になり、介護で腰痛になれば労災保険が適用される。

このように、ドイツの介護保険は家族が介護しているという前提のもとに、介護者を支える側面が強い制度である。そうした考えが反映して、13年1月より、家族介護が期待できない、子どものいない23歳以上の被保険者は保険料率を0.25%上乗せさせて負担することになっている。家族が介護することを前提にして、それを補うことを目的にしているドイツの仕組みは、介護者負担の軽減を目的に明記していない日本の介護保険制度と基本的に異なる部分である。

ドイツの介護保険は、現金給付を基本に組み立てられており、要介護状態の介護家庭に現金を給付し、現物の介護サービスが必要な家庭が在宅や施設サービスを利用する場合は、給付額が2倍になり、サービスの利用を誘導している。

しかしながら、それで施設入所をすると、給付額より施設入所の料金がはるかに高いため、日本での1割相当額をはるかに超える負担額がかかってくる。現実の介護保険の総費用に占める自己負担割合は、日本が7.1%であるのに対して、ドイツは30.4%となっている。特に、施設入所等の場合、ドイツの方が経済的な自己負担感が大きいといえる。そのため、この負担額を支払えない高齢者は、社会扶助でもって賄われることになる。ドイツの介護保険は、すべての介護を介護保険制度で賄うものではなく、ここが部分保険であるとされる所以である。

その意味では、原則1割の自己負担で在宅や施設での生活を支えていく日本の介護保険制度は利用者には安心感が強く、ドイツの介護保険制度とは基本的な仕組みが異なっている。

日本の立場から見ると、日本の介護保険制度は医療保険に近く、ドイツは現金給付があるため、年金保険に近いように見えるかもしれない。しかしながら、ドイツの立場からみると、医療保険も基本的には全額無料であること、また医療保険と介護保険が同じ保険者(疾病金庫と介護金庫)になっており、疾病金庫の被保険者が強制的に介護金庫の被保険者になるため、介護保険は医療保険に従属しており、両者は近い関係にある。

介護サービスで利用者の在宅生活を支えようとする日本の介護保険制度にケアマネジメントが導入される必然性はあるが、多くの要介護者家庭では、現金をもらって家庭介護をしているドイツの介護保険制度には、ケアマネジメントを導入するインセンティブが働きにくかった。ただ、現金給付を得た介護者に対しては、適切な介護をしているかのチェックをするために、最重度の要介護靴任3カ月に1回、要介護兇鉢気任6カ月に1回、要介護認定やケアの質を調査しているメディカルサービス(MDK:MedizinischerDienst der Kassen)の調査員が家庭訪問している。

現実には、現金給付のみの利用者割合は創設された96年には60.4%であったが、12年には43.9%まで落ち込み、現物でもらっている利用者が増加傾向にある。そうした介護サービス利用者から、どのようなサービスを利用して良いか分からない、どこの介護事業者のサービスを利用したら良いか分からないという声があり、ケアマネジメントを導入するに至った。

政策的には、05年選挙で社会民主党とキリスト教民主同盟/社会同盟によるメルケル連立政権の介護保険制度に対する方針として、給付面の改善として、「施設よりも在宅を優先する」ことを連立協定の1つの柱とした。それを実現する利用者側のニーズに応じた在宅援護を強化する方策として、/閥瓩蔽楼茲播合された援護・介護支援拠点の創設、▲院璽好泪優献瓮鵐箸瞭各が、連立与党間で同意された。これを受けて、介護保険法施行後はじめて介護改革が行われ、08年に「介護保険の構造的発展のための法律(介護発展法)」が成立し、これら2つのことが制度化された。

【参考文献】
土田武史「ドイツの介護保険改革」健保連海外医療保障No. 94、4頁、12年6月齋藤香里「ドイツの介護者支援」海外社会保障研究No.184、16〜29頁、13年秋
田中謙一「ドイツの2008年介護改革 特別連載 彌鬼社会保障No.2509、52〜55頁、08年
(出典:シルバー産業新聞)

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