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CareTEX2016 専門セミナー特別配信 No12

【タイトル】
スタッフのやる気と顧客満足が劇的に向上!〜お客様の夢を叶えるフードサービスの取り組み〜

【セミナー概要】
介護付有料老人ホーム、ツクイ・サンシャインの取り組んでいる「お客様の夢をかなえるケア」の内容と、その効果を事例を交えて、講演します。

【講師】
(株) ツクイ 有料老人ホーム推進本部 第二本部 本部長 石野 美代子
ツクイ・サンシャイン郡山 副主任 栄養士 橋本 知美
(敬称略)

※この動画及び講演内容は、2016年3月17日に行われた、CareTEX専門セミナー(於:東京ビッグサイト)
 での講演を収録・記録したものです。
※この動画及び講演内容の無断転載・複製を禁じます。
※当社は、当ページのコンテンツ(動画及び全文)の正確性の確保に努めてはおりますが、
 提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。

専門セミナー 講演内容全文


■ 司会による紹介

皆様、本日は、CareTEX専門セミナーにご参加いただきましてありがとうございます。 これよりセッションナンバー29、施設運営コース「スタッフのやる気と顧客満足が劇的に向上!〜お客様の夢を叶えるフードサービスの取り組み〜」の講演を開始いたします。なお、各セミナーでは、お2人の講師の方に御講演いただきます。

まず、お1人目の先生は、株式会社ツクイ有料老人ホーム推進本部第二本部本部長 石野美代子先生です。石野先生は2002年に介護職員として株式会社ツクイに入社されてデイサービスや訪問介護事業所の管理者、エリアマネージャーを経て有料老人ホーム推進本部に異動されました。また、2008年1月オープンのツクイ・サンシャイン上越の施設長として機能訓練、医療連携、ターミナルケアなどにも取り組まれ、現在は有料老人ホーム第二本部本部長として、施設の運営指導をなさるとともに、ツクイ・サンシャイン町田東館の施設長(2016年3月時点)としてもご活躍されています。

続きまして、ツクイ・サンシャイン郡山 副主任・栄養士 橋本知美先生です。橋本先生は、桜の聖母短期大学在学中に栄養士免許を取得され、御卒業後は産婦人科で看護助手として働かれた後、委託会社にて栄養士としての実務経験を積まれました。栄養士として、お客様と触れ合える高齢者施設での仕事に興味を持たれ、株式会社ツクイに御入社されました。現在はツクイ・サンシャイン郡山に栄養士として勤務し、副主任として調理スタッフを取りまとめられています。

本セミナーでは介護付有料老人ホーム、ツクイ・サンシャインの取り組んでいる「お客様の夢をかなえるケア」の内容と、その効果を事例を交えてご説明いただきます。それでは石野先生、橋本先生よろしくお願いいたします。

■ 職員のやる気を向上させる為の取り組み

皆様はじめまして、株式会社ツクイの石野と申します。本日は、スタッフのやる気と顧客満足度が劇的に向上、という非常にハードルの高いお題をいただいておりますが、皆さんの日々のお仕事に何かお役に立てることがあればと思いお話させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私は昨年行われた高齢者住宅経営者連絡協議会様が主催した、リビング・オブ・ザ・イヤーでツクイ・サンシャイン郡山のフードサービスの取り組みについてお話させていただいたもので、なぜか最近こういう食のお話をすることが多くなってます。 ただ、実は私は、食の専門家ではありません。今は有料老人ホーム推進本部の本部長として現場の職員の指導に当たっております。はじめに、その立場からお話させていただいて、その後バトンタッチしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

さて早速ですが、株式会社ツクイのご紹介を少しさせていただきます。 ツクイは1969年に設立され、1983年に福祉事業をスタート致しました。福祉事業を始めたきっかけは、創業者津久井督六の母親が認知症を患い、今ほど介護や認知症に対する理解のない時代の中、介護に携わる方々の苦労を目の当たりにしたことから始まりました。当時ツクイは土木事業会社でしたが、その会社のフロアの片隅に福祉事業部を立ち上げ、毎日風呂桶とボイラーを積んだ特殊自動車で、寝たきりの方や、お体の不自由になられた方のご自宅をまわりました。ご自宅に着くと、風呂桶を寝床のわきまでお持ちして、そこに外で止めた特殊自動車のボイラーでお湯を沸かし、お風呂に入れて差し上げる、今でいう訪問入浴サービスを始めたのです。当時は大変珍しいサービスでしたが、これが好評で、こんなにも喜んでいただける仕事があるのかと、この仕事を始めてよかったと、心から嬉しく思ったそうです。介護は本当に大変だと知ったこと、だからこそ介護の仕事をして世の中の役に立ちたいと決意したこと、この思いがツクイの福祉サービスの原点です。

その後、今日まで33年間福祉事業一筋に介護サービスを続けてまいりました。そのツクイが信じる二つの力があります。お客様に対して、真心を込めて接し、高い品質でお客様の尊厳ある自立した生活を支援する「ケアの力」、そして、お客様のありがとうを自分の力に変える「人の力」です。大変だからこそ始めた介護サービス、介護が大変なのはまったく当然のこと、しかし、精一杯介護申し上げ、お客様に「ありがとう」「よくやってくれたね」と一言声をかけていただけた時の喜びを明日の糧にできる力こそ、ツクイの本当の力なのです。この原点からその思いを込め「福祉に・ずっと・まっすぐ」のスローガンが策定され、サービスを提供する事業者の独自性を尊重することで、慣例に縛られず、従業員自らが考え、チャレンジできる自由闊達な風土を目指してまいりました。

その社風が女性の活躍の場を広げているのも事実です。ツクイの女性の活躍を応援する行動宣言の中に様々な取り組みが示されておりますが、私も入社した時は14年前、まだ小学生と中学生の2人の子供がおりまして、扶養の範囲内で短時間労働で入社いたしました。その子供の成長とともに在宅の事業所長やエリアマネージャー、そして、有料老人ホーム事業部に異動してからは施設長、そして今は、さらに広い立場で、仕事ができるように本部長という形で活躍の場を広げさせていただいております。その時、その時、家庭生活と両立できるような形で仕事を広げ、やりがいを持って仕事に就いております。

そして、その職員のやる気を向上させ、取り組みを共有し、互いを高め合う取り組みとして、外部の方もお招きしての事例発表会なども開催しております。事例発表会は、機能訓練、おもてなし、地域貢献、人材育成と離職防止、認知症、医療連携と、六つのテーマに絞り、全国520事業所がエントリーし、一次選考を経て、最終選考へと進みます。会場内はそれぞれ最終選考に残った事業所を応援する活気や、他の事業所の取り組みを興味深く聴き入る雰囲気に包まれ、次回は自分の事業所が壇上に登れるようにと、新たな取り組みが頭をよぎり、明日への活力へとなっております。

■ 夢ケア 〜お客様の願いを叶えるために〜

さて、ここまで簡単な会社概要と併せ、会社全体で職員のやる気を向上させるために行っている取り組みを、ほんの一部ご紹介させていただきましたが、ここからは、ツクイの有料老人ホームのお話です。

2003年に在宅サービスで培ったノウハウを集約し、誕生したのが、ツクイ・サンシャインです。現在、34室の小規模から180室の大規模施設まで全国で26施設展開しております。先程お話しましたように、社風に基づき、事業所独自の豊かな発想で様々な取り組みを行っております。しかし、その中で全施設共通の取り組み、これだけは外せないと思う取り組みが、「お客様の夢をかなえるケア」です。 明日が楽しみで眠れない日が子供の頃にあったように、高齢者にも明日が楽しみで眠れない日があってもいいのではないだろうか。そんな思いから取り組みはスタートしています。現実に自分で植えたじゃがいもの収穫が楽しみで明日が待ちどおしくて、ワクワクして眠れない夜を過ごしたお客様の話など、聞いてる方もワクワクするような報告を受けることがあります。

ケアにあたる立場が違えば、夢をかなえる発想も様々で、機能訓練指導員がお客様の諦めていた登山の話を受け止め、日々の機能訓練を経て、一緒に高尾山に登ったり、介護職員が残された時間の少ないお客様の自分の足で歩いて出かけたいという思いに寄り添い、三鷹深大寺にお参りに出かけ、お蕎麦を食べて帰ってきたり、亡きご主人と過ごした思い出の地に立たせて欲しい、という願いには看護職員が健康面を、機能訓練指導員が砂浜で立つための提案と訓練を、フードスタッフがご主人との思い出溢れるお弁当を作り送り出します。 これからご紹介します映像は、岡山県にあります、ツクイ・サンシャイン新倉敷の実際の夢ケアの映像になります。5分ほどお時間を頂戴いたしまして、皆様にご覧いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

いかがでしたでしょうか。実際の映像なんですけれども、このように、施設全体で、それぞれの専門職の立場からお客様の願いを叶えるために自分に何ができるのかを考え、現場の提案が実現できるように、私達管理側は、見守ります。それぞれが自分の力を生かせる環境にあり、お客様の笑顔と、ありがとうの言葉を、自分のやりがいと力に変え、これこそが、ツクイの考える「人の力」、そしてツクイ・サンシャインが行っている私たちスタッフの夢を一緒に乗せた、「お客様の夢をかなえるケア」です。こういった環境の中でフードの職員は、食を通して、お客様の夢を叶えたいと取り組んでいます。そのために行った業務改善が、スタッフ一人一人の意識を変え、介護や医療が注目されがちなこの業界で、フードスタッフの地位を築き上げました。その取り組みを本日お話させていただきますスタッフは、福島県郡山市にあります、ツクイ・サンシャイン郡山で様々な改善に携わった栄養士の橋本です。現在は、ツクイ・サンシャイン全体の食の向上に関わるフードスタッフとしても活躍しております。ここでマイクをバトンタッチさせていただきますので、リビング・オブ・ザ・イヤーではお伝えしきれなかった部分も併せて、お聞きください。

■ フードスタッフの変化のきっかけ

フードサービス担当の橋本と申します。私たちツクイ・サンシャイン郡山のフードスタッフにとって食事とは、ただ作って出せばいいものではありません。食べることと生命を維持するものだけではなく、心にも栄養を与えるもの、食事を楽しめるということは、生きていることを楽しめているとも言えるのではないでしょうか。

私たちは仕事をする上で、心掛けていることがあります。それは、自分自身が楽しみながら仕事をするということです。自分たちが楽しくなければ、お客様に楽しんでいただくことは、難しく思えるからです。お客様と接する時、自然に笑顔が出たり、何気ない会話で笑ったり、行事食・イベント食等のアイディアか沢山浮かんできたりと、楽しんでいるからこそ、気持ちが伝わり、さらに良くしていきたいと、一人一人が思えるからです。 自分たちがお客様にできること・方法を考え、おいしい食事提供のために、お客様への思いやり、スタッフ同士の思いやりを持つことも大切にしています。しかし、開設当初からこんな考えができていたわけではありません。栄養士、調理師の連携が取れず、何事も人任せ、誰かが失敗しても見て見ぬふり、新しいことを提案すれば猛反発、結果チーム力とはほど遠い意見、才能、判断、決断、相談、自信すべてが奪われる環境となっていました。厨房のこうした環境は調理や盛り付けの統一性を奪い、低い顧客満足度へ繋がっていきました。安定したおいしい食事の提供をすることができず、当初は3割近くのお客様に満足していただけない状況でした。調理法や加熱時間、一日のタイムスケジュールが担当する職員によって違い、自分が提供するわけじゃないからという無責任な調理で、にんじんなどの根菜類が硬い、表面が乾いている状態の仕上がりでもそのまま提供する職員もいれば、何とかやわらかく美味しくしようという職員もいましたが、そこに協力体制はなく、調理する職員によって、食事の美味しさにばらつきが出てしまう、という状態が続いていました。また固執した考えや、根拠のない勝手な思い込みが強く、季節感を持たせた楽しいメニューを組み込んだり、年中行事に合わせた行事食、イベント食の提案やアイディアは切り捨てられてしまっていました。お客様の楽しみに繋がる食事を形にする事以前に、自信を持ってお客様に提供できる食事ではありませんでした。

この様なフード内の環境の結果、提案もなくイベント・行事食は減少していきました。自信を持って食事を提供できないからお客様と向き合えず、お客様の事をわかろうともせず、お客様に寄り添いお客様が求めるものを提供していこう、という姿勢はありませんでした。変化を嫌い、自分たちのこだわりや、1人よがりのルールを貫くことに力を注いでいました。このような厨房内の環境が食事に対するお客様の満足度を低くする要因でした。

変化のきっかけは、調理リーダーが決まったことです。意識改革が始まりました。一つは食への追及、お客様の事も、調理のこともわからないことをそのままにはしませんでした。例えば、入居前や退院前のアセスメントや、入居後のお食事伝票による変更によって、お客様の食形態や禁食について疑問があれば、なぜこのお客様はやわらか食なのか、なぜ肉禁なのか、肉のどんなところが嫌いなのか、など疑問に思ったことは、直接お客様にお伺いしたり、各セクションと連携を図り、とことん追求することで納得して仕事をすることができました。さらに、食形態を変更されたお客様や、味つけに不満のあるお客様を中心に毎食フードスタッフ自らがミールラウンドを実施し、お客様の状況の把握や、嗜好を聞くことで視野が広がり、調理面だけでなく介護や医療に対する新しい興味が湧いてくる環境になりました。

二つ目は、スタッフの個性を生かすこと。ツクイ・サンシャイン郡山で働く調理スタッフには、介護施設での調理経験があるスタッフは1人もいませんでした。例えば、あるスタッフは、中華料理の修行をしてきたスタッフ、あるスタッフはレストランの接客を担当していて、調理に興味を持ち、入社してきたスタッフ。たどる道が違えば得意分野も様々です。そこで意見を尊重し合い、それぞれの得意分野を生かした役割分担をしました。信頼関係を大切にお互い小さなことでも認め合うことで、アイディアを言葉に出せる環境を作りました。また、得意分野が活かせることで成功体験が増え、達成感を味わうことができ、より長所を伸ばすことができました。

三つ目に失敗もあると認め合い、失敗を批判するのではなく、挑戦したことを評価する雰囲気を作りました。目標に向かい新しいことにチャレンジしていく中で、失敗してしまうこともあります。失敗を恐れて何もしないより、失敗を恐れずにチャレンジしてみよう、という気持ちが生まれてきました。その気持ちを尊重してくれる仲間たちがすぐ近くにいてくれる、という安心感の中、仕事ができるようになっていきました。喜びを分かち合い、失敗を次につなげ、次はもっとおいしい食事を作りたい、という向上心やアイディアも生まれてきました。その結果、小さな意見も否定せず、耳を傾ける信頼関係、自分の発想が形になるやりがい、失敗をしても手を差し伸べてくれる安心感、学ぶ環境が築き上げられ、パートだからという意識は消え、一人一人が自分は任されている必要な人という意識に変化したのです。

スタッフは自主的に資格を取り始めました。調理師はもちろん、介護食アドバイザー、フードスペシャリスト、フードコーディネーター、介護食士、フードスタッフだからこそ、取得できる資格に挑戦する、それを応援する姿勢がスタッフの夢の実現にもつながっています。スタッフの意識が変わったことで、自然とできる方法を考えるようになりました。以前は、業務改善をしようとすると、必ず反対意見や反発がありましたが、意識が変わったことで、協力体制での業務改正が進んでいきました。食材を生、もしくは表面だけを焼いた状態で調味料と一緒に真空包装し、95度以下の低温で加熱していく真空低温調理法をツクイ・サンシャインでは取り入れていますが、真空包装の、まとめて加熱調理し、冷蔵または冷凍保存していた食品を必要時に必要な量だけ再加熱し、提供できる、というメリットと食材を低温で加熱することで、食材の持つたんぱく質の凝固や水分の流失を抑制できるため、ジューシーでやわらかく、旨み成分の高い美味しい料理の仕上げに繋がるという真空包装と、低温過熱。それぞれのメリットを最大限に活かし、2日前に下処理、前日にパッキング、当日提供という作業動線も作ってきました。併せて、前日調理と当日調理のバランスを考えた献立を作成しました。

また、それぞれの作業マニュアルを作り、作業のやり方と作業にかかる時間の統一をすることによって、それぞれの作業が1人でできるようになりました。仕上がりの向上や調理の効率化、食材のコスト削減を実現するために食材の納品業者や価格が安く品質の良い食材の選定をしました。

また、毎月の在庫チェックを中旬と下旬に設け、在庫管理を徹底しました。現在、ツクイ・サンシャインでは栄養士の業務負担を軽減するため、管理運営部が作成したメニューを軸に献立を作成する取り組みを、一部施設で導入しています。そのメニューを元に、中旬以降に使用する食材が在庫品にあれば、必要な分だけ発注し、栄養士が在庫品を使ってメニューをアレンジしたり、日常的に野菜などが在庫に残っていれば、栄養士だけではなく、調理師がメニューに組み込めるところを探したり、レクリエーションの一環でお客様に糠漬け作りに挑戦していただくなど、食材を無駄なく使う工夫を考え、実践してきました。併せて、以前は統一性のなかった早番、遅番、日勤のタイムスケジュールの見直しができ、一日3.5人必要であった人員が2.5人でスムーズな提供が可能になったことが、自分たちでも驚きでした。たとえ人員が変わっても、動きが変わることはありません。

さらに、その人員でイベント食やレストランの開催もできています。たとえメンバーが変わっても、動きが変わることはなく、今では安定して食事を通した、お客様の夢を叶えるお手伝いができています。

■ 3種のレストランの開催

ツクイ・サンシャイン郡山は3種類のレストランを開催しています。 その一つ、個室レストランはお客様の個別の願いを叶えるためのものです。例えば、ひ孫さんの七五三や入学祝いなど、なかなか参加が難しい場合も会場を施設に設定していただければ、一緒に祝うことができます。ミールラウンドで得たお客様の「○○が食べたい」にお応えして、フカヒレの姿煮や、お寿司など、希望の食事を提供することもできます。もっと気軽に入居者様同士で「女子会をやりたい」「居酒屋気分を味わいたい」など、その都度、相談室を個室レストランへと変化させ、様々な要望にお答えしています。 毎月の誕生日も、入居者様全員で、または個別に等、場面や場所に合わせて手づくりケーキが登場します。個室レストランを始めるきっかけとなったのは、最期の時が迫るお客様の銀婚式、既に嚥下食すらも喉を通らない、味わうことしかできず、十分に栄養を取ることができないご主人、ご主人の意思を尊重し、経管の栄養は選択せず、毎日のように施設に通い寄り添い続けた奥様、その二人に尊敬の気持ちを込めて、ご自宅で暮らしていた頃のように夫婦水入らずで食卓を囲んでもらいたいと、相談室にお祝いの席を設けました。そのお祝いの食事はお客様が思い出に残っているもの、お好きだったもので構成し、嚥下食でも常食でも美味しく味わえるよう工夫しました。ご夫婦が並んで嬉しそうに食卓を囲む姿は、さらに私たちの背中を押し、今では、嚥下食もこのように進化しています。

皆様から向かって右側の写真のように、器や盛り付けにも工夫を凝らし、常食の味をそのまま再現しておりますので、一般の方が召し上がってもおいしいと言っていただけるはずです。二つ目の日常レストランは木曜・金曜・土曜日にオープン。この日のランチは好きな時間に食堂へ入り、4種類のセレクト食から、ご自分の食べたい物をその場でオーダーします。お席も自由なので、仲の良い友人同士で出来立ての食事を楽しみながら、1時間以上も過ごされる方も珍しくありません。外出が難しい方も楽しめるよう1ヶ月に1回は食堂がレストランへ変身します。この日はレストランの雰囲気の中、出来立ての食事をゆっくりと召し上がっていただけます。

レストラン開催のためには、施設長や各セクションの理解と協力が絶対的に必要です。各セクションとの交流が取れる食事委員会でも、理解を求め、配膳・利用方法を検討し、施設全体の取り組みとして、準備を進めてきました。本当は来場されているお客様に実際にツクイ・サンシャイン郡山の食事を食べていただきたいのですが、それはさすがにできませんので、実際のレストランの風景をご覧ください。

自分たちが努力した分、お客様の反応は気になります。照れたような笑顔や「ありがとう」の言葉、「本物のレストランね、おしゃれしてくればよかった」と聞こえてくる会話や、華やいだ食堂の雰囲気、お客様の変化がさらに私たちに力を与えてくれます。もっと喜んでもらいたい。楽しみに待っている時間を含めてもっと何かができるのではないか。もっともっとやりたいがつのります。お客様の夢は私たちの夢でもあります。お互いの夢をかなえる喜びを私たちの力にして、さらに食事で夢をかなえるケアを進化させていきたい、と考えています。

皆様に、ツクイ・サンシャイン郡山のお食事を映像でしかお見せできないことが非常に残念ですが、相談室や食堂をレストランに変化させる空間作りはもちろん、盛り付けや味もレストランには負けていないと、確信しております。でも、それはどこででもできることであるのです。様々な仕組みの工夫ができたことも、職員のモチベーションを上げるようにトップダウン方式に「こうしなさい」とはやりませんでした。

■ 今後の取り組み

次から次へと、現場の方からこんなことがやりたいと、お客様の声に耳を傾けて、どんどんアイディアが溢れ出てきています。当然そこには、一緒に夢をかなえさせていただけるお客様への感謝の気持ちというのは、常に私たちも持っております。そして、この状況で満足することなく、今後の取り組みとしまして、少し考えていることをご紹介したいと思います。

ひとつは新たな嚥下食の展開、という事になります。専用の容器で冷凍した食材を解凍することなく、凍ったまま0.01ミリ以下に粉砕して、ピューレ状やムース状に仕上げることにより、何回か裏ごしした以上の滑らかな食感を得ることができる機材の導入を考えております。栄養価を保ったまま、また、食材の香りをそのままに、お客様に提供できる嚥下食、というのを目指しております。 そもそも自分も現場にいた頃から食材に水分を加え、ミキサーで撹拌し、空気が含まれて、なぜだか量は大量になるミキサー食が、本当に栄養価があるんだろうかと、必要なカロリーを提供してるんだろうかと、現場目線で疑問に思っておりました。その改善に酵素を利用して、何とか食材を柔らかくというところも、フードスタッフが努力をしてくれてはいますが、なかなか酵素の量によって風味が損なわれてしまうという問題もあり、達成できておりません。

また、繊維質、レンコン、ごぼう、干ししいたけなど、どうしても寝たきりのお客様、嚥下食を召し上がるお客様は、運動ができず、便秘になりがちですが、そういう食材こそ、こういった機材を利用して解決していきたいと現在取り組んでおります。

盛り付けの工夫だけではなく、私たちが食べても素材の味がわかる、香り高い美味しい嚥下食を、最後の一口は栄養価が高く、きちんと味わえるものである事を目指し、今後のフードスタッフの取り組みを興味深く、楽しみに待っているところです。 また、その嚥下食にMCTオイル、普通食の方もそうですけど、そういったものを加えて、認知症の改善にもつながることができたら、と考えております。そして、人員対策です。現在でも職員の雇用が思うように進まないのが現実ですが、今後ますます深刻になることは皆様もご承知のとおりかと思います。私どもツクイ・サンシャインは、直営でお客様にお食事を提供することにこだわっております。人手をかければ何でもできるんでしょうけれども、それがなかなか難しい、ということで、スタッフが働ける時間に効率よく分業ができることが大切と考えています。すべてのスタッフが早番・遅番ができるわけではありません。子育て中のお母さんが保育園にお子さんを預けている時間帯、また、定年後まだまだ社会に貢献したいが無理せず短時間で働きたいなど、様々な働き方に企業側が合わせていくことも、人員対策に必要だと考えております。そのために、ご紹介した真空低温調理法やスチームコンベクション、ブラストチラー等々を活用し、計画生産の見直し、再加熱カートの導入も検討しております。

まだまだ始まったばかりの取り組みもあり、必ずしも成功するとは限りません。しかし、立ちどまることなく、お客様の食を味わう喜びと、楽しみを、時代がどう変わっても、提供し続けることができるよう、ありがとうの言葉を自分の力に変え、努力して参る所存でございます。 長時間にわたりご静聴ありがとうございました。

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