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CareTEX2016 専門セミナー特別配信 No8

【タイトル】
 認知症は怖くない!認知症との上手な付き合い方とは

【セミナー概要】
 認知症患者の脳内状態を医学的見解より説明するとともに、効果的な認知症ハイブリッド療法について講演します。

【講師】
 (医) 仙台医療福祉会 仙台富沢病院 統括理事長 藤井昌彦

(敬称略)

※この動画及び講演内容は、2016年3月18日に行われた、CareTEX専門セミナー(於:東京ビッグサイト)
 での講演を収録・記録したものです。
※この動画及び講演内容の無断転載・複製を禁じます。
※当社は、当ページのコンテンツ(動画及び全文)の正確性の確保に努めてはおりますが、
 提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。

専門セミナー 講演内容全文

■ 司会による紹介

皆様、本日はCareTEX専門セミナーにご参加いただきまして、ありがとうございます。
これより、セッションナンバー34 施設運営コース「認知症は怖くない!認知症との上手な付き合い方とは」の講演を開始いたします。
はじめに、本セミナーの講師の方をご紹介いたします。医療法人仙台医療福祉会、仙台富沢病院 統括理事長、藤井昌彦先生です。藤井先生は昭和62年、弘前大学医学部大学院ご卒業、医学博士を取得、平成8年、東北大学医学部大学院研究生を経て、平成18年より同大学医学部臨床教授にご就任されました。さらに平成11年、医療法人東北医療福祉会、山形厚生病院理事長、平成16年、医療法人仙台医療福祉会、仙台富沢病院院長を併任し、現在、同統括理事長でいらっしゃいます。また、日本老年医学会代議員、日本認知症ケア学会などに所属されており、老年医療、認知症、廃用症候群、肺の器質再発といった分野を研究されています。
本セミナーでは、認知症患者の脳内状態を医学的見解よりご説明いただくとともに、効果的な認知症ハイブリッド療法についてご紹介いただきます。それでは、藤井先生、よろしくお願いいたします。

■ BPSD出現の原理

どうも皆さん、おはようございます。ただ今、過分なご紹介の方、ありがとうございました。先程ご紹介がございましたように、私共の医療法人は仙台にあります仙台富沢病院と、それから山形市にあります山形厚生病院を基幹と病院とした医療法人でございますけれど、どちらも認知症の治療病棟と、それから認知症の療養病棟を有する、所謂、認知症の専門病院でございます。

認知症の専門病院なので、もちろん認知症の患者さんが入院してるわけなんですけれども、皆さまご承知のように、認知症には記憶の障害とか、見当識の障害と呼ばれる、中核症状と呼ばれるものがありますね。で、この中核症状が悪化したので、それでうちの病院に入ってくる人がいるか、というと実はゼロなんですね。

では、どういう人が入院してくるんだ、ということなんですけども、ここにありますけれども、BPSD、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaですね。周辺症状とも呼ばれますけども、すごい攻撃的だったり、非常に危険な行為したりとか、ということがあるので、このコントロールがどうもつかない、ということで入院してくる、ということなんですね。
このBPSDは、確かにそういう表面的に見ると、突然そういうことを起こすので、なんか統合失調症の陽性症状に近いのかな、と思う場面もあるんですけども、でもよく観察してみると、どうもそれとは全然違うな、という場面によく遭遇するんですね。よくあるのは入浴のシーンですね、入浴。入浴の時になりますと、まず間違いなく看護婦さんがダーッと走ってきて、先生大変です、と言うんですね。どうしたんだ、と言うと、今患者さん風呂に入れようとしたら、風呂入らないって大騒ぎしてるんで先生が何とかしてください、とこう言うもんですから、しょうがないんで行ってみると、俺は何だ風呂なんか入らないぞ、やめろーとか、言ってるんですね。そうすると確かに暴発してる状態、エリシット(elicit)してる状態で、一見してもう暴力的な危険な行為してるので、あ、BPSD起こしてるなと分かるんですね。
ところが、その患者さん、よく話を聞いてみると、どうもその患者さん、お風呂の前にちょっと喉が渇いて水が欲しかったみたいなんですね。それで来たスタッフに、ちょっと水くれ、と言ったら、今風呂の準備してるから忙しいから後で、と言われて、別のスタッフが来たので水が駄目ならお茶いれてくれ、と言ったら、とんでもねえ、お茶なんて、と言われて、まあ、非常にささいなことかもしれないんだけど、本人にとって機嫌の損ねることの積み重ねがあったわけですね。
で、これ我々Priming、仕込み、といってるんですけど、この段階ではBPSDと分からないわけです。分からないので、ただイライラしてるわけですね。このイライラしてる時に、全然事情の分からない第三者が現れて、ほら何々さんお風呂行くよ、と連れて行こうとしたんですね。それで、なんで風呂なんだ、と言ってるわけですね。その後にさっきから言ってるだろうと、水くれ、水なんでくれないんだ、としゃべってるんですね。というように、どうもこのBPSDの出現には、PrimingとElicitingというような、そういう一つのストーリー性があるな、ということに気付く。ここが非常に統合失調症の症状と違うところだな、と思うわけなんですね。

それからもう一つは、BPSDのDというのはDementia、認知症。認知症の患者さんが行動的な、精神的な異常を起こしてる。これ間違いないんです。間違いないんですけども、それは認知症の患者さんだけが原因で起こっているのか、ということなんですね。それで、我々は、Hypothesisとして、仮説として、このBPSDに対峙する概念として、BPSCというのを提示してるんですね。このCというのは何かというと、Caregiver、介護者なんです。介護者の態度が拒否的で否定的であればあるほど、認知症の患者さんの問題行動は大きくなりますし、この介護者の態度が寄り添うようになると、スーと潮引くみたいにこのBPSD も減るという、相関の関係にある、ということに気付くんですね。

どうしてこういうことが起こってしまうのか、ということなんですけども、ここが実は認知症の患者さんを理解する、とても大切なところなんですね。認知症の患者さんは、確かにこの新皮質の機能が落ちてるわけですね。ですから、100引く7いくつ、と言っても、ちょっと分からない、と言うんですけども、でも、その奥に実は大脳辺縁系という場所があって、その大脳辺縁系の中で扁桃核という核があるんですね。この扁桃核というの何をしているかというと、快不快とか、安全危険とか、こういうの瞬時に言葉を介さないで見分ける、そういう能力をしてる場所なんですね。

ですから、皆さんも初対面の人に会うと、この人は悪い人だとか、この人はいい人だとか、ちゃんと自分の扁桃核が判断してるんです。危険度を、ですね。ところが、我々は新皮質もあるもんですから、でも美人だから違うかもしれないとかって判断が鈍くなるわけですね。だけど、認知症の患者さんは新皮質の機能が落ちていますから、むしろ、大脳辺縁系の扁桃核はビビッドに残ってるんですね。ですから、相手の思ってることが瞬時に分かるわけなんですね。ここを理解しないと、認知症の患者さんをよく理解できない、ということになるわけですけど。

それをちょっと、例え話ではないんですけども、これもまた病棟でよくあるのは、物盗られ妄想の場面ですね。これをちょっとやりたいと思うんですけども、大変申し訳ないですけど、一番前にいるんで指ささせてもらうんですけどね、あんた私このポケットに昨日1万円札入れてたんだけども、今日見たらここにないと、あなたが取ったでしょう、とこう指さすんですね。で、ここに6人の方いるんだけども、6人の方の中でこの人しか指ささないんですね。あんたが取ったはずだ、とこう言うんですね。
ここ6人もいるのになんで自分だと思いますよね。ところが、この方は、この私を一緒に一生懸命、世話をする係になっている方なんですね。その人がターゲットなるわけですね。なんで自分なんだと思いますよね。自分、一生懸命やってるのに、どうして自分に向かうんだと思いますよね。そうすると、さすがに人格的に優れた人でも、なんでそんなこと言うのとか、いい加減に本当困ったと思いますよね。
でもね、家族であれば、これ口に出して言うかもしれないんですけども、スタッフさんであれば、こういうことを口に出して看護師が言ったらですね、鬼の看護部長が飛んできて、患者さんに対してなんでそんなこと言うの、とか言うから、絶対スタッフは口に出しては言わないと思います。言わないんだけども、これ思うんですね。思うと、パチッとシグナルが入るんですね。あ、この人は私を嫌っている。この人は私の敵だというシグナルが、パチッと認知症の患者さんに入るんですね。
悪いことに、先程言ったその扁桃核、というのはヤコブレフ情動回路というのもって、一旦そこにシグナルがボンと入ると、グルグルと駆け巡って、刷り込みを起こすんです。一旦、刺激が入ってしまうと刷り込みを起こしてしまうもんですから、この人は悪い人になってしまうんですね。

で、悪い人になるんだけども、残念なことにお世話しなきゃならないから言葉を変えたり、手の品を変えたりして、何々さんお風呂に行きましょう、と声掛けるんですね。だけど行かない、あんたの言うことを聞いたら、ろくなことならないから絶対行かないとなるわけですよね。それで、それでもお風呂入れなきゃならないので、3人がかりでズルズルと連れてって、やめろーとか言って、1時間かかってやっと入ってくれた、というそういうストーリーなるもんですから、そうするとこのBPSCもBPSDも増えてしまうみたいな、そういうストーリーになってしまう、ということなんですね。

ところが、先程言った、ヤコブレフ情動回路の刷り込みですから、これを良い刷り込みに切り替えることも、また可能なんですね。もう一回やってみますね。あんた、私このポケットに昨日1万円札入れてたんだけど、今日ここにないと、あなたが取ったはずだ、と指さされた時に、なんで私なのかということですね。なんで私なのか。

実は、先程言った中核症状の代表的なものに、見当識障害ありましたね。見当識障害に大きく三つあるんです。三つあるうちの第1番目は、人物の見当識障害なんですね。ということは、いつも関わってくれてるので、この6人いるんですけども、6人の中で分かる人はこの人しかいないんですね。あとの人たちは人の形してるんだけど、認知症の患者さんから見ると、石とか、草木とかと同じで、全然もう眼中にないんです。だからここには絶対に向かわないんです。それで、ここに向かうんですね。なるほどねと、人物の見当識障害があるので、この6人いるんだけど、一番自分が関わったので、自分に向かってるんだな、と思ってあげることがまず一つですね。

それから、その残りの見当識障害には、時間の見当識障害と、それから空間の見当識障害、とあるんですね。先程、「あんた、このポケットに1万円を入れてた、昨日」という、昨日なんですけどね、昨日。それが実は10年前のことを勘違いしてしゃべってる可能性もあるわけですね。時間の見当識障害があるから。ですから、10年前にここに入れた1万円札が今日見当たらないというのは、実は正しいことなんですね。
そうすると、そこで行われることは、「あらら、困りましたね」と、「じゃ一緒に探しましょうね」と、言うしかないんですね。「私はポケット見ても取ってないし、必ずあると思うんだけども、どっかにあると思うから一緒に探す」「ものすごい大変だ」、戸棚を開けたり、引き出しを引いたりして、「おかしいないね、どこにいったかね」とか、言いながら、その時に5分ぐらい探したら、「まあちょっと、今すぐ見つからないようだから、まずちょっと喉も乾いてきたし、おいしいお茶を入れてあげるから、そのおいしいお茶を飲んで、それからまた一緒に探しましょうね」と言って、おいしいお茶を入れて、そして、一緒に飲んであげるわけですね。で、「おいしいねって、おいしいね」って言うわけですね。
で、その認知症の患者さんが、おいしいお茶を飲んだ後に、おいしいお茶をここに置いて、さ、さっきの1万円探しにいくぞ、という人がいるかっていうと、ゼロですね。「いやあ、今日はおいしいお茶、ごちそうになって、どうもありがとうございました」って言って、さっきの1万円札の話なんにもなくなってしまうんですね。
ですから、1万円札があるとかないとか一生懸命、知的に説明するよりも、このように情に対応した形で対応してあげながら、「困った時は、いつも一緒にいますから何でも言ってくださいね」、というふうな情動の良い刷り込みを起こすと、そうするとこの人は、「あ、この人は私を思ってくれる、私の味方だ」という刷り込みなるわけですね。もう、この人は素晴らしい人なるわけです。
そうすると、「はい、何々さんお風呂行きましょう」と声掛けると、「あ、この人は見たことあって、この人いい人だ、この人の言うこと聞いたら、いいことある」と思って、それでもう、先程は3人がかりズルズルと入って、今は1人なんだけど、「はい、分かりました」と言って、自分で行って5分でお風呂入って終わる、というですね。そういうストーリーになって、実はBPSCもBPSDもお互いに減るという、そういうことも可能になるということなんですね。

ですから、大切なのは認知症の患者さんを診る時に、新皮質の機能を診るのではなくて、その奥にある大脳辺縁系の機能、これを中心に認知症の患者さんを診るという、これはとても大切だということなんです。その為には、知的なことよりも情に語りかけて、そして、大脳辺縁系の良い協議をきたせば、そうするとその場所は、患者さんにとっては安心できる、好ましい雰囲気になっているし、1万円札なくした、と言って「あんた勘違いで間違えてるよ」と言うと、ドンと自尊心が傷付きますからね。
だけど、そういうこと一切言う必要ないですから、そうすると自尊心が保持されて、BPSDも軽減して、これ頑固な患者さんも、たまには「あんた私のこと、いっつも見てくれてありがとね」とか、ポツっと言ったりすることもあるんですね。そうするとやっぱりお世話する人も、「この人がこんなこと言うと思わなかった」、と思って、非常に嬉しくなって、実は、BPSCの方、Caregiverの方の分も減って、そしてお互いにBPSDもBPSCも減る、というような、そういうストーリーを作ることもできるということなんですね。

■ ラベンダーアロマテラピーとコーヒー療法

脳の機能というのは、永久に分からないと思うんですけども、分かってる範囲で言うならば、先程から何回も言っているように、新皮質の部分ですね。これはいろいろな100引く7とか、そういうのどうだ、ということなんですけど、確かに認知症の患者さん、この機能は衰えている。これは間違いないんです。だけどさっきから何回も言っているように、この奥にある大脳辺縁系、これは情動感情とか、そういうものなんですけれども、これは残ってるんですね。残ってるから、怒ったり、いかったり、こういうことがあるわけです。

だけど、認知症の患者さんが怒ったり、いかったりすると、困るということで、ここを抑えてしまうような強い、例えば、抗精神病薬、強い薬を使ったりすると、もともと新皮質の機能ないわけでしょう。
で、大脳辺縁系がかすかに残ってるんだけど、そこのところを抑えてしまったら、もうなんにもない、ということになりますよね。これはやっぱりおかしいだろうと、認知症の患者さんに対応するのに、ですね。
だからこのNeuroleptics、これ抗精神病薬を使うのではなくてむしろ、せっかくこの機能が残ってるんだから、ここに良い刺激をたくさん加えたらいいんでないか、というのがコンセプトなんです。
大脳辺縁系に良い刺激を加えると、先程から問題になっているBPSDも実は改善して、そして実は、ここには新皮質と大脳辺縁系にある相互の太い支配を受けてますので、ここに良い刺激を加え続けると、新皮質の機能も改善することがある、ということなんですね。
具体的に言うならば、大脳辺縁系に良い刺激を加え続けてたら、今まで全然娘さんの名前が出てこなかったのに、1年ぶりに「あれハナコが」って言ったりして、「え、1年ぶりに自分のお母さんが自分の名前言った」とかって、そういうこともあるということなんですけどね。

では、そんな大脳辺縁系、扁桃核に良い刺激ってそんなにあるもんか?と、こう思うと思うんですけど、実はたくさんあるんですね。
一つ、今日持ってきてるんですけど、一つは匂いなんです。匂いは大脳辺縁系の扁桃核に嗅球、というところが直接の経路持ってるんですね。扁桃核の皮質核というところにダイレクトに入る経路持ってるので、この匂いが非常に一つの良い刺激として、大脳辺縁系の扁桃核に入るんですけど。今これ、新しいやつ(ラベンダーオイル)を持ってきました、開けてみますね。これ、ちょっとちょんちょんと付けて、回していただければ、あ、いいですね。では、皆さん、これ回しますので、もしあれだったらちょっと塗って匂い嗅いでいただければと思う、この匂いですね。

実はですね、私共の方の病院には、東北大学の医学部の5年生が全員、認知症の臨床実習で来るんです。
その時にこの瓶を1人1瓶ずつ渡して、そして、さ、認知症の患者さんにこれ付けて差し上げてください、と言うと、何だこれ、と言うんですね。こんなもので認知症の患者さんが良くなることない、と思うんだけども、これを付けて認知症の方に匂いを嗅いでもらうと、「あーいい香りだ」とか、「あんたイケメンだね」とか、「ああ、南無阿弥陀仏」とかこういうふうに言うので、医学部の学生もびっくりして、こんな瓶でそんないい刺激あるのか、と思うんですね。まあそういうことなんですけども。

実は、匂いの中には酢酸リナルとか、いろいろと芳香物質入ってるんですけども、これが鎮静効果がある、ということも事実なんですけども、実は塗ってあげてる、というのが、非常にポイントなんです。
そして、「いい香りですね」、と一緒に共感してあげるのが、とても大切なんですけども、ツールとしてこれを活用しながら、情動に良い刺激を加えることはあるわけですね。
で、我々が報告してますけど、コントロール群に比べて、ラベンダー介入群ではBPSDの指標値になるNPI値っていうのが、4週間後に有意に下がることを報告してます。素晴らしく良い刺激として、入り得るということですね。

匂いのもう一つの代表は、実はコーヒーなんですね。コーヒーはβ‐ダマセノンという芳香物質があるんですね。皆さん、騙されて喫茶店で高いコーヒーを飲まされてると、こういうのがあるんですけどね。喫茶店で飲むコーヒーってすごくおいしいでしょう。だけど自分で飲むと、あんまりおいしくないですよね。なぜか、ということなんですね。それは、喫茶店がβ‐ダマセノンの充満状態にあるからなんですね。
どういうことか、というと、このβ‐ダマセノンはコーヒーを入れた時の香りにも入ってるんですけども、実は豆をガリガリとすり潰した時にふわっと出る芳香の中に、リッチに含まれてるわけですね。ですから、もう喫茶店は豆ひきっぱなし状態なってますから、あそこに入った瞬間に騙される、というそういうことなるんですけどもね。

ということなると、認知症の患者さんにコーヒーを飲ませればいい、というのもあるかもしれないんですけども、豆をひいてもらわなきゃならない、ということになるわけですね。
それで我々は、こういうミルを用意して、マイミルを用意して、そこでジャーっと豆を入れて「さあ、引いてください」と患者さんにガリガリとひいてもらうんですね。この患者さんなんか、パーキンソンもあって、絶対普段は手動かないんだけど、コーヒー豆ひく時だけ、ちゃんとこう動くんですね。本当なのか、と思うんですけどね。まあ、ひいてもらって、そして良い香りを嗅いでいただいて、それから、もう一回コーヒーを入れていただく、ということをしてるんですけどね。
ただ、この時に、スタッフがちょっとした間違いしてるんですね。
それは何かというと、ここにもありますけども、スターバックスありますね。今の若い人たちはコーヒーというと、紙コップで飲むわけですね。それでコーヒー入れたまではいいんですけど、それを紙コップで出したわけです。そしたら、この人たち、何だこれはって怒ったんですね。この人たちは、喫茶店のことをサテンと呼ばれた時代に生きているわけですから、そうすると、コーヒーはちゃんと瀬戸物のカップで出てこないと駄目なんですね。それで反省して、ちゃんと瀬戸物のカップを用意して出したら、「うーん、これはいいね」、っとこうなるわけですね。

なぜかというと、やはり重さとか、口当たりとか、そういうのも全部トータルなんですね。認知症の患者さんだから、分かんなくなってるから適当でいいは大間違いで、認知症の患者さんだから本物じゃないと駄目なんですね。
ですから、本物を出すということが、とても大切だと。そこはここでも示されてるんですけども、そうすると、最高の笑顔ができて、大脳辺縁系に良い刺激が加わる状態を作ることができる、ということですね。

■ VOD療法

それから、視覚、見る。これも素晴らしく良い効果として入るんですけども、最低最悪なのは、実は、同じ見るでも本人にとって興味のないものを見るのが一番苦痛なんです。
よくある場面としては、大きなテレビがあって、ボーっと大きく音かけて、そこに車椅子並べて、そしてかけてると、なんか場面としてはテレビ見てるように見えるので、患者さんが満足しているのかと思うと、よーく見てみるとやめてくれ、と言ってるんですね。全然わけの分からないのを見せられて、それで眠くなったりして、こっくりこっくりすると、「寝るなー」って起こされるもんですから、非常に大変な思いをするということで、「やめてくれ」と言ってるんですけども、本人にとって興味のある、本人の好きなものを見るのは話が違うんです。
それで我々は、ビデオカメラを貸し出しをして、そして、この患者さんが本人が好きだったもの何でもいいから撮ってきて、と言って、家族に渡して撮ってきてもらうんですね。で、その素材を今はピクチャーモーションブラウザーとか、ムービーメーカー使うとすぐできますから、3分くらいの映画仕立てのものにですね。それを見せてあげるわけです。
この患者さんは、ミトンなんか使って、もう寝たきり状態で常に天井だけ見てる人なんですけども、この患者さんが元気だった時に育てた、庭のコスモスの映像を患者さんの家族撮ってきたんですね。それを編集して大画面でベッドサイドで見せたら、「何々さんが育てた庭のコスモスが、今こうやって咲いてるって撮ってきてくれたよ」って言ったら、「あれがあんなに咲いてるのか」って言って、もう満面の笑顔になるんですね。
ですから、どんなに寝たきりであっても、本人にとって意味のあるものを見せてあげると、それは素晴らしい大脳辺縁系に対する良い効果として入る、ということなんですね。

それからこの患者さんは、私は非常に印象に深い患者さん。
なぜかというと、入院してきてからこの方、1回も食べないんですね。本当食べない。食べれるんですよ、食べれるんだけど、拒食。拒食というものも認知症の患者さんの問題行動として、激しい問題行動なんですね。もう本当食べないですから。点滴になっても、それでも食べないんですね。それでほとほと困り果てて、家族にいろいろ話聞いた。この頑固なおばあさんに、一つだけ弱点があることが分かったんですね。
それが何かというと、美空ひばりが大好きだ、ということが分かったんですね。それを聞きつけたうちのスタッフが、映像を使って、ショートムービー作ったんですね。ショートムービーでパッとここに美空ひばりを映したんです。そこまで険しい顔して見てたんだけど、うーんてやって口閉じてたんだけど、スイッチでバンと美空ひばりで、「あ、美空ひばり出てるよ」って言った瞬間に、美空ひばりは好きですから、「あ、美空ひばりだー」ってなったんですね。そしたら、「あーいいねえ」ってなって口元が緩んでしまったわけです。そこにうちのスタッフが気付かれないように、さりげなく甘いものフッと差し込んだわけですね。そしたら、本人は絶対食べないと思ってんです。だけども、美空ひばりに気がいって、甘いものが入ってきて、お腹も空いてたから、モグモグと食べてしまったんですね。

どういうことか、というと、もう意固地になって食べないと思ってたわけですね。だけど、それ食べてしまったので、美空ひばり見てるし、少し食べてやるかと思って、それからはちゃんと食べてくれるようなって、点滴もなくなった、というそういうストーリーなんですね。ですから、どんなに激しい拒食という症状でも、実は本人の好きなものを見ると、それも改善し得る、という、そういう症例だということなんですね。

■ ホワイトノイズ療法

それから音。音も素晴らしく良い刺激として入る場合あるんですね。これ補聴器みたいに見えるんですけど、ホワイトノイズジェネレータという機械なんです。ここにポッチがあるんですけど、ポチっと入れると全周波数の60デシベルの音が出るんですね。音で言うと、シーっていう音ですね、ホワイトノイズですから。これ我々が聞くと、雑音だと思うんですけど、こうやって補聴器みたいに耳にあてて、スイッチをポンと入れると、ある種の認知症の患者さんは、「あー、いい音だ」って言うんですね。「華厳の滝のような音だ」とか、「夜暗い部屋で、私この音じっくり聴きたい」とか、言う人がいて、びっくりするんですけどね。
そういう人達は、ではどういう人たちなのか、と調べてみたら、嬉しいとか、気持ちがいい、と言ってる人たちは、もともと若い時に、Schizophrenia、統合失調症があって、常に幻聴に悩まされてた人たちだったんですね。その幻聴に悩まされていた人が、いつも幻聴に悩まされているんだけど、そこにホワイトノイズが入ってきたら、「あ、ホワイトノイズだ」とこう言うんですね。それで雑音に、ちょっとこのインテンションが移って、それで本人の気がそれて、それで常にある幻聴から少し解放された、それがおそらく、このような形で、気持ちがいいと言ってるんではないか、というふうに思ってるんですね。

実は、このホワイトノイズは、子どもさんの学習障害とか、あるいはautism、自閉症の患者さんに弱く聞かせておくと、非常にいいという、そういう効果も報告されてるんですね。ある種の音がそういうことで非常に良い効果をきたす、ということはあり得るということですね。
でも、ちょっと意地悪なスタッフもいて、「先生そんなこと言ったってね、耳も聞こえないし、目も見えないし、そういう人たちどうすんの」って言う人いるんですね。ほとほと困り果てるんだけども、その時は考えながら「いやいや大丈夫、それでもね、ヘレンケラーもそうだったでしょうと。最後の最後まで残るのは体性感覚、触覚ですよ」、と言うと、そうか、となるんですけどもね。そうなんです。体性感覚は一つ素晴らしい刺激として入るんですね。

■ 情動療法とハイブリット療法の活用

で、我々はこれを足浴療法と言ってるんですけど、どういうことか、というと、入院してくる患者さんが家族と来た時は、家族と一緒にいる時だけは一緒にいるんですけども、家族が帰りますよね、そうするとおもむろに持ってきた荷物を風呂敷に包んで、トットトッとエレベーターホールにトンと立つんですね。そうすると、「どうしたんですか」、「あーこれで帰らせてもらいます」と言うと、看護婦さんがまたターッと血相変えて走ってきて、「先生大変です、今日入院した患者さんが、帰宅要求がすごいです」と言うんですね。帰宅要求とか、四文字熟語なると、なんかすごい問題行動起こしてるみたいに思うんですけども、「ただ、うちに帰りたい」と言ってるだけなんですけどね。
だけど、それが放置されてると、やっぱりいろんな問題行動に繋がる可能性があるので、できればないほうがいいんです。ないほうがいいので、この足浴療法を入院して患者さんは1週間毎日、病棟がかわった患者さんも1週間毎日必ずする、ということにしてるんですね。
そうすると大体3日目、4日目からはエレベーターホールに立たなくなるんです。「何々さんどうですか」って言うと、「いやーここ、いいとこだねーと、うちに帰ったって誰も足洗ってくれた人いないんだけど、ここだと毎日足洗って気持ちいいから、私しばらくここにいることにしたから」、ということなんですね。
つまり帰宅要求も、ここが1秒1分たりともいたくなければ強くなるし、ここでもいいか、と思うと減るという、そういう関係にあるので、それを分かりやすく、ここに伝えることができる、ということなんですね。

我々はここでグリーンペーストを使ってるんですけども、これ、ティーペースト使ってるんですけど、これどういうことかっていうと、皆さん、お〜いお茶とか、そういうペットボトルありますよね、日本では、あれを皆飲んでるもんですから、年間数十万トン規模の産業廃棄物の緑茶葉が出てるんですね。これを全部無料でもらってきて、それを粉にして、そしてこれに使ってるんですけど、原料が無料なんですね。
そういうものを使うと、実は足浴をする時に、足を洗われる人は、「あーお茶の香りだね」ということ言うんです。だけど、足洗う人も問題があるわけですね。足洗われる人は、気持ちがいいのはいいんだけども、足洗う人は「面倒くさいなとか、いやーちょっと足臭いな」とか思いながら洗うと、さっきのシグナル入るわけですよね。この人は私の足洗って洗いたくないのに無理して洗ってんだ、とすぐ分かるわけですから。だけどお茶を使って洗うと、環境がお茶に包まれてるので、足洗う人も「あーいい匂いだな」、洗われる人も「いいね」と思って洗われるので、そういう意味では、BPSCもBPSDも減るストーリーになるので、こういうものをうまく活用するというのは、一つの方法としてあるんでないかな、というふうに思ってます。

それから、一歩進んで、ぎゅっと抱き締めてみたらどうか、ということなんですけどもね。これ、さすがにスタッフがぎゅっと抱き締めたら、骨がボキッとか折れても困るので、それで我々は、この柔らかい素材でできた人型の人形作って、ここマジックテープになってるんですけどね、それを椅子にセッティングして、そしてそこでぎゅっと抱擁する、とやってみたんですね。
で、この患者さんは不安症状が強くて、ずっと病棟徘徊して歩く患者さんなんですけども、「ちょっと、いらっしゃい」って言って椅子にセッティングして、ここに座ってもらうと、そうすると安心してずっとここに座ってるんですね。手を見ると分かるようにぎゅっと、抱き締められて自分で確認してるように座ってるんですね。
おそらく我々もそうなんですけど、自分の境界、どっからどこまでが自分の境界、これがよく分からなくなるっていうのがあるんですけども、それが認知症の患者さんもあって、だけども、実際にぎゅっと他から抱き締められると、「あ、私はこっからここまでが私だな」と、「私はここにいれば安心だね」、ということをちゃんと分かると。安心につながる、ということで、おそらく、抱擁されることによって、そういう安心感が出てる、ということでないかと思ってます。

ここまでくると、いよいよおかしくなってきた、と思うかもしれないんですけど、実はこれ、厚労省の方から、認知症の介護レンタルグッズ第一号として認知された由緒正しいものなんですけどもね。
あのこれ実は、前回、一昨年東京で国際介護福祉機器展というのがあって、そこで展示してるんです。これユニケアさんというブースがそこにあると思うんですけども、ユニケアさんの方と共同開発で作ってるので、あれなんですけどね。そこで展示したんですね。そしたら、フランスのAFPの記者がこれをパチッと写真撮ったんですね。なんか若い女性が、人形で抱き締められてにこにこしてるね、というのでパチッと写真撮ったと。
それをYahoo!のUSAのAll stories (headline)とか、そういうとこにポンと出したら、ロンドンポストとかワシントンポストの記事になって、タイムの記事になって、全世界を100万件もヒットして駆け巡ったものなんですけどもね。それが最後にどう報道されたかというと、アンチロンリネスチェアというふうに報道されたんですね。日本では、うら若い女性が孤独を癒やす為に、この椅子に座って、孤独を癒やしてるぞ、という記事になったんですね。違うって、認知症の為に作ったんだ、言ったんですけどもね。でもまあ、それだけ反響があったんです。

そしたら、CBSというアメリカの三大ネットワークがあるんですけど、テレビ局からユニケアさんの方に電話が入って、この人形を4体送ってくれ、という話だったんですね、アメリカに。それで送ったんです。何に使ったかというと、アメリカのCBSの番組ザ・ドクターズって番組あって、それは専門医がそこに座るんですけども、その専門医が座りながら感想言ってるんですね。なんの感想を言ったのかすごく不安なったんですけど、ジェニファーバーマンという女医さんがいてシカゴ大学の准教授なんですけど、それが座りながらこうやってたんですね。「いやーこの椅子に座って抱かれてるとオキシトシンがラッシュに出ますね」、って言ったんですね。オキシトシンてのは、皆さん知ってると思うんですけども、抱擁ホルモン、幸福ホルモンとも言われるんですけども、この抱き締められてこうやると、そういうのがいっぱい出るという、大変良いこと話してくれて私もほっとした、送ったかいがあったなと思ったんですけども。そういう代物なんですけどもね。

その時に、実は我々、この椅子に座って、こういうふうにされると身柱という場所が、刺激されるということを、その一つの目的で作ったんですけどもね。
この身柱というのは、場所としては、この第3と第4の胸椎棘突起の、この間にある場所なんですけど、これは昔から、小児の夜泣きと、かかんの虫に良い場所ということで、子どものそこをお母さんが触ってあげれば、子どもが非常に安心しますよ、という昔からの経絡の場所なんですね。とてもいいところ。
ここは、やっぱり積極的に認知症の患者さんは触ってあげた方が良いと、我々思っていて、そこが、おそらくこの椅子で刺激されながら、そういうオキシトシンが出た、というふうなことなんでないかなと、後で解釈したんですけども。

実は、そうですね、今までは抗認知症薬という薬は、アリセプトという薬しかなかったんですね。ところが4年、パラパラと新薬が出て、その一つにリバスチグミンの経皮吸収型の薬として、貼り薬として、リバスタッチという薬が出たんです。そこで、リバスタッチを作った製薬会社が、本社の方がうちの方に来て、いろいろ相談した時に、せっかくの貼付剤ですから、貼る薬なので、貼るという機会は触れる、という機会につながりますから、だからただ貼るんではなくて、貼る時に今、言ったポイント、身柱というポイント30秒ないし、1分ぐらいさすって、そして、それから貼ってみたらどうですか、ということをプロポーズしたんですね。
それで、二つの群に分けて、リバスタッチをただ、ポンと貼ったグループと、リバスタッチに身柱のマッサージを一緒に加えてやったグループと、これを4週間後、効果見たわけです。そしたら、リバスタッチ単味ではあんまり効果が十分に引き出せなかったんですけども、リバスタッチを使いながら身柱のマッサージを一緒に加えたら、先程言ったNPIという数値が有意に下がることがわかったんですね。
ですから、どんなに新薬でも、実は情動を刺激するようなそういう刺激と一緒に加えないと、本来の効果を引き出すことはできない、ということなんですね。

このことから言えるのは、これ我々、造語ですけども、認知症のハイブリッド療法、と言ってるんですけどもね。
ハイブリッドっていうのは、交雑、異種のものを組み合わせるっていうことなんですけども、この認知症の患者さんの例えば、BPSDのような非常に解決が困難な問題、これを薬だけで何とかしようと思っても、なかなかできないわけですね。だけど、この薬に、さらに情動を刺激するような非薬物を、これをコンビネーションで一緒に展開すると、実はすごく良い効果が出るということなんですね。

これはどういうことが言えるのかというと、医師は当然この薬物療法をすべきです。する立場にあるわけですね。でも医者も、やっぱり同時に、この情動療法一緒に展開する、ということがとても大切なのが一つ。それから、この薬物療法よりも非薬物療法の方が外側に付いてますよね。どういうことか、というと、ここにちょっと刺激を加えてあげると、トルクがきいて、障害が非常に良く軽くなるということなんですね。

ですから、情動療法を展開すると、笑顔を作ることができて、情動療法を展開するのは、もちろん医者もしなきゃならないんですけども、ケアの人たちでも看護師さんでもあるいは、家族の方でもどなたでもこれは展開できるということですから、このような役割を一緒に果たしていくと、解決が困難な高齢者の問題も、実は、一緒に解決していくことができるんではないか。ですから、ケアの一つの役割というのは非常にこういう意味では、高い役割があるな、ということが示されてるということなんですけどね。

■ 向精神薬・抗精神病薬と認知機能の関係について

実は、我々の病院は認知症の病院なので、認知症の患者さん来るんですけど、認知症じゃない人も来る、というパターンがあるんですね。
それどういうことかとまとめてみると、1番目と2番目は、確かに物忘れがちょっとある、というぐらいだったんですね。ところが、お嫁さんが現れて、「いやーうちのばあさん、こういう間違いも、こういう間違もした」と言って、それで、あれよあれよという間にいろんな薬が組み合わせ使われて、来た時は確かに、19点とか13点しかないんですね、MMSE値が。これカットオフが23点なので、皆、認知症になってしまうんですけども。どうもおかしいんじゃないか、ということで、かなり飲んでた薬を整理したら、実は19点だったそのおばあさんが29点とか、13点だった人が22点とか、とちょっとこう良くなってるんですね。あ、薬でかなり認知機能を落としてしまってる、という症例が、紛れ込んでいるということです。

それから3番目は、キャリアウーマンだった60代の女性で、眠れないというところから始まったんですけど、それからいろんな薬が重なってるうちに、あれよあれよと認知症じゃないか、ということなって、十何点まで落ちてしまったんですね。
でも、旦那さんが諦めきれなくて、それでセカンドオピニオンで我々の病院に来たんですけど、どうも違うねと、CTとかMRIとか撮っても全然違うので、いやこれ認知症じゃないから、薬を整理しましょうと、整理したら、これ28点に戻ったんですね。戻って認知症じゃなくて良かったね、という話なったんだけど、その後は、旦那さんを尻に敷いて暮らしてるってことだったので、どっちが良かったかって話だったんですけどね。

4番目は、ピックと診断されて入院してきた患者さんなんです。60代の女性なんですけど、どうしてピックと診断されたかというと、夜中にふと出て、いなくなってしまうと、そういうことだったんですね。よく話を聞いてみたら、やっぱり、60代ぐらいなると女性も、私の人生本当にこれで良かったか、と思い悩んで、夜中にふと出ていきたくなるんですね。出ていったとこまではいいんだけど、新興住宅街でいろんな家が建ったりすると、うちに帰れなくなってうろうろしてたと。それでピックと診断された、ということで、実はこれも薬がかなり使われてたのを、整理したら15点が27点、元に戻ってしまったんですね。この方は確実に、旦那さんと今、仲良く暮らしてること、ありますけどもね。

それから、5番目と6番目認知症なんです。ただし、来た時、この患者さん25錠とか向精神薬使われてきてるんですね。で、シンドロームマリンといって、悪性症候群の一歩手前で来たんです。それで来た時は0点なんですね。それで全部薬を抜いて、ウォッシュアウトしたら、12点ぐらいまで改善してるんですね。このくらいなると、認知症でも少し受け答えができる、ということで、認知症を恐れるあまりに、たくさんの薬が使われることによって、こういう作られた認知症がある、というのも経験の中にありました。

では翻って、認知症治療病棟、どうなのか、と我々の病院で見てみると、来た時にかなり薬、向精神薬使われてるんですけども、入院後は落として、1錠とか2錠くらい、これ抑肝散とか漢方薬なんてちょっと使ったりしてる、というパターンなんですけどね。
それから抗精神病薬、メジャートランキライザーと呼ばれるものに関してどうかというと、来た時に10錠とか飲んでるんですね。で、学生さん来るので、話聞いたら学生さんもお金が欲しくて、治験でこの抗精神病薬飲んだことがあったって、1錠ですね、そしたら3日か4日くらいフラフラして、考えられなかったんですね。そういう薬を認知症の患者さん、10錠も飲まされて、ちょっとどうなのかと思うんですけども。
来た時はそうかもしれないけど、さっき言ったハイブリッド療法みたいなの加えて、これで、使わなくてもちゃんとコントロールできるということが、示されています。

■ 認知症の情動機能検査

で、先程から何回も繰り返してるんですけども、認知症の患者さんは、確かに新皮質の機能落ちてる。だけど考えてみれば、今、認知者の患者さんを診ている検査、というのは長谷川式とか、MMSEとか、言うんですね。100引く7いくつですかとか、ここどこですかとか、そういう話ですからね。でも、それ落ちてるの分かってるわけですからね。まあこれは落ちてる。
だけども、大切なのは、大脳辺縁系だ、と言っていますね。大脳辺縁系の情動機能、情動機能こそが大切なのに、では情動機能を診る検査があるのか、ということなるんですけど、実はこれ、ないんですね。ないので、我々は、Mini-Emotional State Examinationというのを作ったんです。認知症の情動機能検査、というものなんですけど、おそらくパンフレットの中に入ってるかもしれませんけども。そこでユニケアさんのブースでも実物は置いてると思うんですけどもね。

これはどういうことかというと、大きく二つのカテゴリーがあって一つは五感に対する反応がちゃんと入るかということです。先程からずっとお話してるようにですね。それを一つ診るということです。それからもう一つは、総合的情動機能がちゃんとあるかどうかっていうことなんですね。これは、例えば、社会規範への反応とか、幸福への反応とかそういうものがちゃんと保たれてるのかどうか、こういうことを診るんですけれども。

この中で、二つ程、ちょっとピックアップして見てみますけども、五感に対する反応の中では、この絵を見せるんですね。この絵です。
それで、「さあ、何々さん、これから私、言葉言いますので、その言葉は、この二つの図のうちどっちだと思いますか」って聞くわけですね。皆さんも、やってみていただきたいと思うんです。言いますよ、と言ってね。では、プーバ、プーバどっちですかって聞くと、皆さんまず間違える、プーバだったら、こっち、と言うでしょ。キキ、どっちですか、キキ、と言ったら、こっち、と言いますよね。
それは、プーバ、という言葉も、キキ、という言葉も全く無意味な言葉なんです。だけど、日本でもアフリカでも、中国でもどこでも同じ質問すると、まず間違いなく、プーバはこっちだし、キキはこっち、と言うんですね。
どういうことか。我々は言葉の持つ語感というものを、このように図形化してイメージする、そういう能力がちゃんとある、ということですね。ちゃんと認知症の患者さんもそれは分かってるわけなんです。

例えば、皆さん、赤ちゃんがすやすや寝てる時に、赤ちゃんにキキキキキ、と声掛けないですよね。キキキ、と声掛けたら赤ちゃん、ぎゃーと泣くわけですから、赤ちゃんには、レロレロブーとか、バーとか、やってるわけですね。赤ちゃんには、ちゃんとこの言葉をこういうイメージの言葉を選択して掛けてるわけですね。
だけど、認知症の患者さんともなると、やはり忙しいし、早く来なきゃならないから、「早くこっち来ないと、駄目こっちにこっち」とか、と言うと、こっちの言葉ザクザクと刺さるわけですから、そうすると、BPSDは増悪するわけですよね。どんなに忙しくても、「はい、何々さんこちらの方に来てくださいね」とでも言えば、こっちの言葉になりますから。そうすると、非常にそれはBPSDを増幅させることにつながらない、ということ。
なぜならば、認知症の患者さんがこれを分かってるから、ということが一つですね。これをちゃんと意識しなきゃならない、ということがあるんです。

それから、総合的情動機能の場合では、これをやるんですね。これ代表的なもの、うば捨て山の絵です。
まず、小学校4年生ぐらいの子ども連れてきて、100引く7いくつだって聞くと、得意な顔して93とかって答えますよね。で、その子どもに、これはうば捨て山の絵なんだけど、よく見ると、このおばあさん枝折っているんだけど、なんで折ってるか、と子どもに聞くと、子どもですから、わかった、これ、ばあさん山に捨てると大変だから、こうやって印付けて、後で帰るために折ってる、と言うんですね。
小学校4年生の子どもだからそれでいいんですけれど、ところがそれと同じ質問を認知症の患者さんに聞きますね。
まず、100引く7いくつですか、と言うと、認知症の方「ちょっとわからない」と言うんですね。これでこの絵を見せて、これうば捨て山の絵なんだけども、と言うと、昔からこの話よくあってね、年取ると食減らしの為に、山に捨てられるんだ、と話をするんですね。でも、よく見るとおばあさん枝を折ってんだけど、なんでこれ折っているのか、と聞くと、これはね、山捨てられるおばあさんは自分はしょうがないんだけども、でも、この息子が、帰る時に道に迷うと困るがら、それで、行き道行き道に枝葉を折って、それで帰るように指示するために折ってるんだ、と言うんですね。
そうすると、100引く7が分かる、分からない、これも一つの判断の大きな基準であることは間違いないですけども、「この枝葉が自分のために折ってる」と言う子どもと、「この自分を捨てる子どものために折ってる」と言う、親心を言ってる認知症のおばあさんと、どっちが正しいのか、というその判断の基準というのもある、ということですね。
ですから、新皮質の機能だけで認知症の患者さんを診てはならないというところがこういうところでも示されているというふうに思います。

これを実際にこのMMSEという認知機能と、それからこの情動機能の展開してみると、これ全部認知症なんですけどね。認知症なんだけども、非常に情動機能の高い人たちがいる、ということなんですね。ここやはり理解しなきゃならなくて、例えば、この人なんか落としていくと7点くらいしかないですから、MMSE値7点しかないですから、4歳ぐらいの知能しかないんですけども、でも情動機能が満点近い人がいるわけですね。
こういうように情動機能の高い人たちには、その人たちを満足させるような、そういうプログラムを考えなきゃならない、ということになるわけですね。

先程言ったように、我々が一番良くないのは、無意味なテレビの前に座らせるの良くない、ということ言ったんですけども、このEmotional Satisfaction Indexっていうの調べてみると、情動満足度指数、調べてみると、本人にとって全く興味のないものを見ると満足度はマイナスなんです。やめてくれ、と言ってるんですね。ところが、釣りゲームとか、ボーリングゲームとか、カラオケ、ここら辺もちょっとなんですね。
非常にいいのは、ギター伴奏付き合唱曲。これ何かっていうと、若いスタッフがギターの大好きなスタッフがいて、歌好きなスタッフがいて前に出て、「さあ、皆さん私これからギター弾くからね、みんなで歌いましょう」とやるわけですね。で、懐かしい歌をガチャガチャと弾くと、なんだが若いのが来て、楽しそうにやってるし、なんだか知ってるような歌だから、皆で歌うと、そうすると、非常に満足してるんですね。

それから素晴らしく満足度高いのは、実はこれ、演劇情動療法ということなんですね。これは、情動を最大限に引き出す能力のある人、誰かっていろいろ考えたんですけども、それはプロの役者だろうということになったんですね。それで仙台在住のプロの役者さんに来ていただいて、そして、感激・感動させるようなセッション組んでいただいて、認知症の患者さんを感激させてくださいって言ったんですね。
それが、このように報告されてるんですけども、この方、前田有作さんという方で、松田優作に憧れて役者になった、と言うんですけどもね、その方が来られて、そして、感激感動する涙を流すようなことを、ちゃんと情感込めて読み合うと、周り皆泣くんですね。泣いて、そして、今日は本当にいい話聞いた、と帰るんです。そういうことを何回か繰り返していると、「あれ、おめえハナコでねえか」、ということが出てくるということなんですけどね。

それをうまく説明すると、演劇情動療法を繰り返して、3カ月後で調べてみると、このMESE値、情動機能が有意に上がる、ということが分かってるんです。と同時に、さらに詳しく1年後の解析してみると、例えば、ドメペジルに代表されるような、抗認知症薬に、このDETを一緒に加えたグループは、ただ薬だけ飲んでるグループに比べて、有意にこのMMSEが上がるということが分かってるんですね。
どういうことかというと、薬だけ飲んでると1年後には、出始めが100だとすると92ぐらいに下がるんですけども、抗認知症薬にDETを加えたほうは、1年後に108パーセントまでむしろ上がるんです。

それが先程も言ったように、今まで出なかった、娘さんの名前が出てくるということ、これ非常に不思議に思いますよね。認知症の患者さん皆、ダウンサイジングするのが当たり前だと思ってますから。
ところがどういうことかというと、情動を刺激するようなものを何回も繰り返しているうちに、AからBにいかないとハナコという名前が引き出せない、だから、ハナコが出てこなくなったとするのであれば、情動を何回も刺激して感激感動させているうちに、AからCとか、CからBとか、DからB、という新しいダイナミックなネットワークができて、結果としてAからBにたどり着いて、そしてハナコって名前を引き出せてる、ということなんですね。ですから、新しいネットワークを、実は情動刺激すると作ることができて、それがおそらく認知機能の改善につながってるのではないかと。そういう場面も、起こり得るってことなんですね。

■ 老年医学から認知症をとらえた見方

10分程、時間残したので、ここから、ちょっと認知症をもうちょっと広い視野から見て、老年医学から認知症をとらえた見方をしてみたいと思うんですけどね。
今日は施設の方もたくさんいらっしゃると聞いているので、あれだと思うんですけど、認知症の患者さんの最大の合併症は何かというと、実は肺炎なんですね、肺炎。肺炎を起こしてくると大変です。もう本当に点滴したり、抗生物質して、酸素かけて大変なんですね。それで我々の病院でも診てみると、大体その肺炎の中の6割は、不顕性誤嚥性肺炎といって、ちょっと飲み込みが悪くなって、そして起こしてくる肺炎なんですね。あと残りの4割は何かというと、嘔吐誤嚥性肺炎なんですね。食べたものベッと吐いて、それをコッと吸ってしまって、そして肺炎を起こしてしまう、という肺炎なってるんです。

こっちが4割で、こっちが6割なんですけれども、それをよく解析してみると、この不顕性誤嚥性肺炎は変化なかったんだけども、嘔吐誤嚥性肺炎ではセンノサイド、プルゼニドとか皆さん知ってますね。便秘の薬なんですけど。この便秘の薬を飲んでるグループは、1例もこの嘔吐誤嚥性肺炎を起こさなかったんですね。分かったんです。
それで、それから先1年間、全例にこのお通じをきちんとコントロールする薬を飲んでもらったところ、薬をちゃんと飲んでるグループでお通じがちゃんと出てるグループは、1例も肺炎を起こさなかったんですね。もちろん、この6割の不顕性誤嚥性肺炎は残るんですけども、先程まであった4割の占めている、嘔吐誤嚥性肺炎はなくなった、ということなんです。
ですから、肺炎は肺の病気ではあるんだけど、実は便秘を予防することが、ものすごく大切。便秘を予防することによって、4割も肺炎を防ぐことができ、そこに源流がある、ということなんですね。

老年医療、老年医療から見て、老年症候群を考えるといろんな病気がありますね。だけどこれは、確かにいろんな病気がたくさんあると見えるんですけども、それは全部因果関係でつながってるとも、見えるんですね。
そして、その一番奥にあるところが、この生活の部分で、食事であったり、排泄であったり、ということなるわけです。実はケアの本質はここにあるわけですね。これをきちんと整えることによって、こういう病気を作らなくて済むと、むしろ、ケアこそが一番の源流である、ということがここで示されてる、ということになるわけですけどね。

この中でも、癌という言葉が出てきてるので、これも実際の皆さんの経験であると思うんですけど、癌と認知症の組み合わせ、これもありますね。癌も末期だし、認知症もあるし、もう大変に大変重ねると大変じゃないか、と思うかもしれないけど、このデータはそうじゃない、というデータなんです。全然心配ない、というデータなんですね。この1例目から5例目までは、確かに癌が末期まであったんですけども、最後の最後まで食事をして、最後は癌で亡くなるんですけども、ちゃんと天寿を穏やかに全うしたっていう症例なんですね。

ところが6例目は、親戚の親戚という人が現れて、いや、そうは言っても、やっぱり専門科で診てもらわなきゃ駄目だ、ということになって、大腸がんだったんですけども、内視鏡やったり、ピンホールになってるから早晩、イレウスなるので食止めして下さい、という指示だったんですね。おかしいな、ちゃんと食べてるし、ちゃんと出してるのでいいんじゃないかなと、思ったんですけども、でも「専門科がそういうふうに言うもんですから、そうしてください」っていうことだったんでそうしたんです。
そして、食べれるのに食べないでしょう。なんで飯食わせないんだ、という話なったんですね。今度、点滴で何だこれは、と抜こうとするので、危ない危ないで今度、拘束になったんですね。拘束なって、なんで縛るんだってやめろ、となったら、これちょっと鎮静しなきゃならない、といって抗精神病薬なんか使ってるうちに、あれよあれよという間に1カ月で亡くなってしまった、というそういうストーリーなんですね。

どんなに致命的な癌という疾患であっても、認知症があって、それがもしあるのであれば、自然な形で診てあげた方がいい。むしろ、そこに医療が介入することによって、いろんな問題を作ってしまうと、いうことがここで示されてるっていうことなんですね。
このことから言えるのは、認知症の患者さんは確かに、先程から何回も言ってるように新皮質が衰えてます。それから身体の機能も衰えてくるんですね。でも、どんなに衰えてても、この人に見合うだけの、大脳辺縁系のほのかな喜びがあって、そして、それはちゃんとバランスがとれていれば、そういう人はハッピーだ、という考え方なんですね。

欧米から来た概念に、成功老化、という言葉があるんです。それは80になっても90なっても、若い人のようにマッチョマッチョで頑張ろう、というんですね。そういうマッチョな人は1,000人に1人とか、1万人に1人しかお年寄りいないですよね。あとは皆、失敗老化した、ということなるわけですね。
それはおかしいと、そうじゃなくて、むしろこのバランスをとる、ということが、老化では大切で、我々は平衡老化、バランスドエイジング、と言ってるんですけども、そのためには、どんな状態であっても、その人に見合うだけの、大脳辺縁系のほのかな喜びを与えてあげるのが大切だと。

実は、ケアの本質っていうのは、この一人一人のほのかな大脳辺縁系の喜びを与えてあげて、どんなに寝たきりであっても、どんなにADLが落ちてても、それでちゃんとバランスを作ってあげる状態を作れば、その人はQOLを高く、その人の人生を終えることができる。ここにケアの本質がある、とも言えると思うんですね。そういうことを、ここで言ってるんですけども。

これジェームスバトラーというハーバード大学の大学院の教授なんですけど、私と佐々木学長と3人で共著で書かせてもらったもんなんですけども、このバトラーさんというのは、ハーバードなんだけども、非常に東洋的な思想に強くて、この平衡という言葉を一番最初に東洋で言った人は誰なんだ、とこうなったわけですね。
そしたらそれは、お釈迦様だ、ということなったんですね。お釈迦様は、中庸とか、中道とか、こういうこと言っているわけなので、お釈迦様の言葉を借りるならば、生老病死があって、それを苦悩と考えるならば、ちゃんと因果関係を考えて、修行して、諸行無常をちゃんと理解して、自我を消して、苦悩から解脱しなさいね、とこう言ってるわけですね。

これを我々が展開してる老年医療、認知症を考えてみると、まず、老年医療とは一元的に考える必要がある。そして、修行というのは、BPSDはあるんだけども、我々側、BPSD側が、それの原因なってることがあるので、これは修行するべきだなと。諸行無常というのは、新皮質が必ず衰えてしまうんだから、衰えてしまう新皮質を何とかしよう、と考えるのではなくて、残ってる大脳辺縁系を大切にして、平衡老化を正せば、自我を消されることにもつながるし、そのためには、非薬物療法を積極的に取り入れて、ハイブリッド療法で展開して、情動を高めることをやればいい、とこう言えるわけですね。

で、一般医療ありますね。一般医療は、今は何やってるかっていうと、臓器別診療して因果関係ですね、それから修行というのは医療技術、1分でも1秒でもカテーテル入ってる、ドクターヘリ飛ばすぞとか、やってるわけですね。ドクターヘリ飛ばしても、結局寝たきり作るとか、そういうことなってるわけなんですけども。このようなところまではいいとしても、このお年寄りに、健康な心身を求めるとか、お年寄りに成功老化を求めるとか、DNAをいじっても、1秒でも1分でもお年寄り長生きしようとか、こういう考え方は、どうもここら辺からは、お釈迦様の教えからちょっと離れてくるんですね。
だけど、これがとても大切な医療はあるんです。それは、若い人たちがいるんです。それから、今晩婚化してるので、遺伝子治療を必要とするような、子どもさんもたくさんいます。そういうのはやっぱりこういう考え方できちんと治してあげる、ということが必要なんですけども。おそらく、今日皆さんここにいらっしゃる、我々もそうですけど、対象としている、お年寄りであり、あるいは認知症の患者さんということを考えた時には、やはり高次機能的な一般医療的な考え方ではなくて、むしろお釈迦様の教えに従った形で物事を考えながら、その人自身、一人一人のQOL、ADLの高い、そういう一つの在り方を模索することが大切なんではないか、というように思うんですね。
これも先程言った、ジェームスバトラーさんと私と佐々木学長と3人で、書かせていただいたですけども、日々の診療の中で、確かに認知症というものは、なかなか問題の確かに重いものではあるんですけども、逆に言えば、この認知症から学ぶことは非常に多いんです。

先程、学生さんの話をしたんですけども、医学部の学生さんが来た時に必ず認知症をどう思うか、と言うと、認知症だけはなりたくないとか、認知症は治らないからとか、こういう発言は多いんです。だけど、先程のような、匂い。これをして、さすってあげたりすることによって、最高の笑顔が作られたり、或いは、ものすごい感謝の言葉をいただいたりすると、あれ、と思うんですね。今までいっぱい習ってきた技術とか、知識とか、これも、ものすごく大切なんだけども、医師として考えた時には、この小瓶でこれだけの笑顔を作れるという、つまり、これを作る原点にあるのが情動であると。情動というものの良い刺激というものも、医師としては、展開しなきゃならないんじゃないか、ということで、最後にはレポートにそう書くんですね。

私、三重丸にして100点と付けて返してやるんだけども、それほど、認知症の患者さんは、むしろ医学部の学生さんにとっても最高の医師になるための、一つの先生である、ということを強く感じて考えて、彼たち実習終わるわけですけども、同じように我々も、そういう視点から認知症の患者さんを見ると、より認知症の患者さんが怖いものでないし、認知症の患者さんを本当に大切にするような、そういう考え方につながってくるんではないか、ということで、これを雑多な話になりましたけれど、これで今日の講演を終わらせていただきます。ご清聴どうもありがとうございました。

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